再読不可避、書籍化待望の話題作。

 本作が優れているのはまずタイトルの秀逸さ。個人的には「兵隊やくざ」「ジョン、全裸連盟へ行く」に匹敵する。このタイトルだけで読む人間が倍は違うと言える。
 そしてうさぎというファンシーなイメージにだまされてはいけない。ましてやうさぎ強盗を英訳したrobber rabbitの響きがロジャー・ラビットに似ているからなんていうあなたはすでに死んでいる。うさぎのなかには素早い動きで襲いかかり、鋭い牙で人間の首を噛み千切るヤツもいるのだ。油断して殺されないように備えとして、事前に『銀河ヒッチハイクガイド』「パルプ・フィクション」「SHERLOCKシーズン3第1話」なんかを確認しておくといいかもしれない。ただし、うさぎ強盗の鮮やかな手並みに殺されてみるのも悪くはないだろう。
 本作は2回目を読みたくなる内容だ。そうしなければ真に本作を読解したと自信を持てなくなる。2回目にはあらゆる場面が1回目の印象と変化していることだろう。それを確認したくてたまらない。だが慌てる必要はない。本作が書籍化されれば、確実に再読することになる。書店で『うさぎ泥棒には死んでもらう』のタイトルを見かけたら、あなたは手に取らざるをえない。あなたはすでにうさぎ泥棒の術中にはまっているのだ。

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