これぞ騙される快楽!

私が「騙される快楽」なる言葉を知ったのは高校生の頃だ。
確か第一回日本ファンタジーノベル大賞の受賞作品への書評として、選考委員であった荒俣宏先生が書いた言葉だったと思う。
ファンタジー小説への書評として「騙される快楽」とはまた変な言葉ではあるが、まぁそれはともかくとして当時高校生だった私はこの言葉にたいそう衝撃を受けた。
「なるほど! 鮮やかに騙されると確かに気持ちがいいもんな!」と。
以来、私はミステリーなんかを読むと「トリックを見破ってやるぞ」という気持ち以上に「さぁ、見事に、艶やかに、痛快に、私を騙してみせろ!」という欲求を抱いてしまうようになった。
ハードル爆上げである。

そんな私にとって今作『怪盗うさぎには死んでもらう』は、とんでもない快楽マシーンである(えっちな意味ではない)。
とにかく次から次へと騙してくるし、騙される。「キモチイイ!」が何度も続く。
そう言えば、先の書評にて荒俣先生が「はしたなくも『もっと、もっと騙してくれ』とおねだりしてしまう」と書いており、とんだ変態野郎だなと当時高校生だった私は思ったものであるが、なんてことはない、かく言う私も今作の前では『騙される快楽』に溺れ、もはや「しゅ、しゅごいのぉぉぉぉぉぉ」と絶叫しながらダブルピースをキメてしまいそうになっている。
素晴らしい作品だ。是非とも角川から書籍化してほしい。
そしてその書評に、このレビューを使用したりすると、角川文庫『帝都物語』で一躍有名になった荒俣先生も喜んでくれるに違いないと思うのだがどうだろうか(ぁ



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