悪党どもの群像劇

――いかにしてこの状況は出来上がったのか?


このミステリにおいての謎はこれだと私は考えていました。

泥棒たち、組織の青年、そして死体。
過去と現在それぞれがパズルのように配置されたエピソードの欠片たち。
視点と視点が重なり合い、謎が広がりながらも次第に謎の真相に近づいていく。
そんなミルフィーユのような構成の見事さには唸らされました。

ほぼ全編通して悪党しか出てこないキャラクター造形は小気味良く、
暗躍する「うさぎ強盗」の動機が語られた瞬間、
そこまできてなにゆえか「してやられた」と思いました。
うさぎ強盗はさわやかだ!

この人はここから更にもっと面白いものを投下してくれるのではないかと思うので、
ぜひとも今後も書き続けてもらいたいものです。

ところでこの世でミステリーを読むにあたって、結末や犯人を把握したあと、
伏線やミスリードに改めて気付きに行くという楽しみがありますね。

……

ええ、はい。もう一度うさぎ強盗の世界に行ってこようと思います。
それでは!

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