異世界ファンタジーで見事な「どんでん返し」を決めた稀有な例。
それがどれくらい稀有かと言えば…ほとんど唯一無二と言っても良いほどの偉業です。
もとより異世界ファンタジーというものは短編向きのジャンルではありません。その世界がどんなものであるか設定を長々と語り、主人公はどんな立場でどのような性格をしているのか、目的はこうで解決の為になにをするのか……そんな事を逐一説明していくのに膨大な文字数を必要とするからです。複雑で大人向けのシナリオを追い求めるほどに序盤でもたついてしまう。(ロードオブリングを見たまえ)
したがって短編で面白い異世界ファンタジーを書くのは至難の業だし、ましてや「どんでん返し」を決めてみせるなんぞ夢のまた夢でしかない……そのはずだったのです。
ところが、この作者さまは私の定説にNOを突き付けて下さった。
物語の構成力と発想、理路整然と説明する力が並外れている。
それ故に起こり得ないはずの奇跡を起こすことが可能となったのです。
この話は、わかりやすく、面白い、しかも意外性があるのです。
他に何を求めるというのでしょう? いえいえ、まだ肝心な所が抜けていますよ。
その上に、この作品は「完璧な着地」という離れ技を付け足して下さいました。
オチの演出には「全てはこの為にあったのだ」と読者を納得させる独自の美学と説得力が共存しています。
まとめるとどうなるのか?
令和の時代に相応しい異世界ファンタジー。完璧ということですよ。
十回選び直しても十回とも入賞する作品。お見事です!