この作品の色に囚われていく……!

 新旧折衷のような独特の世界観に、背筋を冷たい指先でなぞるような、淡々とした文章。死体のような、生き物だったものの温度を彷彿とさせるこの作品に、読めば読むほどに囚われていきます。

 少し話は変わりますが、私は『ジョジョの奇妙な冒険』が好きです。初めて読んだときは、話はおもしろいし、確実に好きなのだけれど、絵になかなか馴染めない。そう思っていました。ところが、気付けばこの作品はこの絵でなければ駄目だ、と思うようになっている。

 この作品も、まさにそうです。正直、読み始めたときはどこか取っ付きにくさを感じました。が、相良あざみさんのこの文体でなければ、この恐怖の良さは味わえない、と自信を持って言えるほどに、この作品の色に囚われているのです。

 この作品は決して、人間の醜さや恐怖だけを描いているわけではありません。詛い屋をしていて他人の機微に鈍感というキャラクターでありながらも、親しい人間のことは少なからず観察していて、時折その人のことを考えてみたりもしている。そんな人間の温かさを残しているからこそ、禍々しい部分も際立っているのだと思います。

 是非、ご一読いただきたい。

(第十六話まで読んでのレビュー)

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