この作品を読んだ時に、どうも句読点の位置が気になりました。
読んでいてはたと気づいたのですが、どうも音声に近い打ち方なんですよ。語られる言葉、あるいはそういった伝承のようなもの……。そう感じた時、目蓋の後ろにこの世界が描かれました。
恨み、つらみ、苦痛……どろどろと抽出され、凝縮された悪意を見て「面白い」とのたまう彼。1人延々と嵐のように声を出す彼。あるいは唯々諾々とあるがままを貫く少女……。
語り部が口を閉じた時、まるで憑き物が落ちたかのように「文章を読んでいた」ことを思い出す作品。
別世界じみた要素が多いこともあり、私は平気でしたが……「素質のある方」は「彼」のように魅入られるかもしれない。
そんな作品です。
新旧折衷のような独特の世界観に、背筋を冷たい指先でなぞるような、淡々とした文章。死体のような、生き物だったものの温度を彷彿とさせるこの作品に、読めば読むほどに囚われていきます。
少し話は変わりますが、私は『ジョジョの奇妙な冒険』が好きです。初めて読んだときは、話はおもしろいし、確実に好きなのだけれど、絵になかなか馴染めない。そう思っていました。ところが、気付けばこの作品はこの絵でなければ駄目だ、と思うようになっている。
この作品も、まさにそうです。正直、読み始めたときはどこか取っ付きにくさを感じました。が、相良あざみさんのこの文体でなければ、この恐怖の良さは味わえない、と自信を持って言えるほどに、この作品の色に囚われているのです。
この作品は決して、人間の醜さや恐怖だけを描いているわけではありません。詛い屋をしていて他人の機微に鈍感というキャラクターでありながらも、親しい人間のことは少なからず観察していて、時折その人のことを考えてみたりもしている。そんな人間の温かさを残しているからこそ、禍々しい部分も際立っているのだと思います。
是非、ご一読いただきたい。
(第十六話まで読んでのレビュー)