概要
字数の関係でラストシーンを詰め切れなかったのを、ちゃんと物語として完結させてみました。
本作のモチーフにしたのは、福田和子事件です。殺人を犯して逃亡し、15年近く全国を転々とし、時効まであと21日というところで、福井のおでん屋の女将をしていた時に逮捕されました。わたくしはそのニュースを見て、罪は罪としても、15年近く逃亡し続けた女の、それも時効間際の心境というものに思いを馳せないわけにはいきませんでした。その頃に考えたことを、今回、短い小説にしたものです。もちろんフィクションです。
現実の福田和子事件はこちら。ウィキですけど。改めて読み返してみると、これは衝撃を受けざるを得ないですね。まさに
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!結局、逃げは禊にも償いにもならなかった
時効を待って逃げ続けた女の心境を読み綴った、実に踏み込んだテーマを取り扱った本作。
やはり、というべきでしょうか。
後悔はしつつも、どこか自分勝手と言いますか、本心から罪と向き合い、償っているような感じがしないというのが見事です。
もし、彼女が逃げもせずにその場で捕まっていたならば、内心はどうであれ、情状酌量の余地は残されていたのかもしれません。
しかし、約25年……彼女はその期間の事を、勝手に罪滅ぼしの期間であるかのようにすり替え、自身を悲劇のヒロインかのように憐れむことで、何かを償った気になっていただけでした。
ある意味では、じっくりと長い年月をかけて認知を歪ませたとも言えそうです。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ロクでなし男を心の底から愛し、殺してしまった女。彼女に未来はあるのか。
とあるロクでもない男を心の底から愛し、見捨てられ、殺してしまった女。彼女は変装や整形を繰り返して逃げ延び、25年の公訴時効が成立するまで残り8時間となった。
男にボロ雑巾のごとく捨てられてしまい、その拍子に殺してしまったものの、彼女はどうしてもその男の優しさや男前さを忘れられない。
ずっと男を愛し続けるとともに、犯した罪の重さに苦しみ続ける彼女。果たして、彼女を待ち受ける結末とは。
殺人の公訴時効という非常に重いテーマを扱う本作。心情描写や人物描写の筆致が巧みで、心を揺さぶられます。
Web小説としては珍しい正統派の社会派ストーリー。重たい内容ですが、作者様の渾身の魂が込め…続きを読む - ★★★ Excellent!!!硬く締まった文体と視点の入れ替え、来し方の回顧が絶品!
本作は、日頃、いろんな文体・ジャンルの作品を書き、いずれの作品も高評価を得ている作者の作品である。まさに、スポーツ・お笑い・エロス・現代ドラマ・異世界ものまで、5つの顔を持つ作家と言っても過言ではない。
本作、まず文体が素晴らしい!私が大好きな松本清張を彷彿とさせる素晴らしく引き締まった文体。
筆者の新たな境地を示したと言えよう。今までのグラマラスな女性が出てくる小説のイメージからすると、もし、この筆者がカクヨム世界の中にあって逃亡劇を繰り広げれば、まず25年は捕まえられることはなく逃げおおせるであろう。
この変貌変装振りは、ビックリ&リスペクトである。