月日は罪を洗い流してくれるのか?

“時効”という概念のあった殺人罪。罪に追われ、罰から逃げ続けた一人の女性の、時効8時間前の心境が繊細に語られています。
動機はシンプル。でも25年間世間の目から自分を隠して、もはや自分でも自分が元々どんな姿だったか思い出せない彼女は、それでもまだ事件のことをこう考えている。

「彼が悪かったのに、私が捕まるのはおかしい」
「彼のことが、今でも好き」

この執念こそ、25年もの月日を自分を偽って生きてきて、きっとこれからも偽り続けるしかない彼女の、恐ろしくも哀しい生き様の象徴なのかもしれません。


多彩なジャンルのお作品を生み出されている作者様ですが、どのお作品でも登場人物の心理を描かれる筆致は緻密で繊細で…この女性にも共感はできないけれども、逃げて逃げて擦り切った一つの精神のあり方を、隅々まで解剖したような描写をぜひご一読ください。

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