結局、逃げは禊にも償いにもならなかった
- ★★★ Excellent!!!
時効を待って逃げ続けた女の心境を読み綴った、実に踏み込んだテーマを取り扱った本作。
やはり、というべきでしょうか。
後悔はしつつも、どこか自分勝手と言いますか、本心から罪と向き合い、償っているような感じがしないというのが見事です。
もし、彼女が逃げもせずにその場で捕まっていたならば、内心はどうであれ、情状酌量の余地は残されていたのかもしれません。
しかし、約25年……彼女はその期間の事を、勝手に罪滅ぼしの期間であるかのようにすり替え、自身を悲劇のヒロインかのように憐れむことで、何かを償った気になっていただけでした。
ある意味では、じっくりと長い年月をかけて認知を歪ませたとも言えそうです。
テーマの重さもさることながら、サスペンスミステリーの終盤のような奥深いドラマチックさや、湧き上がる大人の侘び寂びを感じる情景を思い浮かべられる、圧倒的な読み応えがある「魅せる」作品です。
ブラックなコーヒー片手に読むもよし、はたまたぬる燗を頂きながら読むもよし。
ちょっと大人な飲み物を相棒にして読みたくなる一作です。