希望だけでは辿り着けない、救いの場所

大人の記憶を持ったまま、子どもの体に戻ってしまう主人公。その時点で「時間」という見えない鎖に縛られているような感覚があります。

何かがおかしい、ただのやり直しじゃ済まない、もしかしたらその選択には重たい代償があるのでは……そんな空気が最初から漂っているこの物語。

ささいだけど決定的な“ズレ”が、まるで小さなひび割れのように、物語の世界を貫いている。
読み手としても、どこまでが“本来の世界”なのか、ここは本当に理想なのか、あるいは罠なのか……そんな問いを抱えながら、先を読みたくなってしまいます。

描写もとても魅力的です。
例えば子どもの体で大人の頭を持っているという、、ちぐはぐな感覚がとてもリアルに描かれていて、残酷な世界のループに立ち向かう中でほっとするような日常の一コマを描かれていたり。
「家族を救いたい」「人類の滅亡を止めたい」という大きな目標を掲げながらも、その根っこには人と人との細やかな関わりや葛藤があって、それを丁寧に描いているところも素敵です。

タイムリープというSFの枠を使いつつ、愛や後悔、罪の意識、そして救いといった人間らしいテーマがきちんと芯にある。それが、この物語に深みと重さを与えているんだと思います。

特に心に残ったのは、「救う」ということが本当に救いになるのか?という問いかけです。
主人公が家族や世界を救おうと手を伸ばした先にあったのは、思っていたのとは違う人間関係や、想像していなかった現実。
希望だけでは辿り着けない場所、だけど、それでも前に進もうとする姿に、読む側も自然と覚悟を迫られるような気がしました。

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