生と死、記憶、そして、関係性……
- ★★★ Excellent!!!
秋の花をテーマにした、三本の短編からなる本作。
ただの怪奇現象で終わるのではなく、人間の生と死、記憶、関係性までもが巧みに掘り下げられています。
「女郎花・男郎花」は美しい語り口と舞台設定が印象的でした。
少女が手にした蛍のような美しい光がやがて変化していくさまは、どこか無情な残酷さを感じます。
一番身近な現実に近い世界観の「菊」は、あるものがみえるということが会社の査定に関係している、という発想が面白かった。さらりと書かれてあるように思えるのに、しっかりとした読後感がすごい。
「柊」。子ども目線で語られるこのお話は、一見ほっこり系かと思いきや、途中から一気に牙を剥いてくる。なくしてはじめてわかる大切さ。やさしさとはときに恐ろしく、痛みをともなうものなのかもしれません。
どれも、怖さの中に人間の感情や葛藤が感じられるような、心地よい作品でした。