ガレノスの壁 8万文字以上であること　8月26日

　プロローグ　無名の医師と医帝ガレノス

　時は紀元二世紀、ローマ帝国が栄華を誇る時代。帝都ローマでは名医ガレノスが皇帝マルクス・アウレリウスの侍医として、全地中海世界にその名を轟かせていた。

　だがその影で、東方の片隅、アナトリアの山間に、一人の無名の若き医師がいた。彼の名は歴史に残っていない。ただ、民は彼をこう呼んだ――

> 「影の癒し手」。

　彼は名声や権威を求めず、ただ目の前の命を救い続けていた。

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　ある日、旅の予言者が山里にやって来てこう告げる。

> 「東方より光が昇り、西方の太陽を呑み込むであろう。だが、その前に“医の神”が試練を与える」


　その言葉の通り、ローマからの使節団が山里に訪れ、無名の医者にこう伝える。

> 「ガレノス閣下が、貴殿の存在を知り、…続きを読む