第39話 万能の医術師 ――ダ・ヴィンチ、解剖台に立つ
――茨城県・水戸郊外、廃工場跡。
《キブツの医者たち》の本拠地を突き止めた蟇田刑事は、重装備の特殊部隊を従えて突入した。
だが、待っていたのは医療テロリストたちではなかった。
暗闇の中、量子干渉ノードが開かれ、歪んだ空間から姿を現したひとりの男。
レオナルド・ダ・ヴィンチ。
科学者であり、芸術家であり、そして人類史最古の“臨床解剖図”の描き手。
彼は静かに言った。
>「この時代もまた、“命”を形でしか捉えられぬようだな」
>「では、**形の裏にある“真実”**を見せてやろう」
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観察者の手術:医療と美の間で
ダ・ヴィンチの手には、何の武器もなかった。
ただ、手稿と鉛筆とスカルペル――そして、“観察”の力。
特殊部隊の銃弾が発射される瞬間、彼は動いた。
人間の関節可動域、心臓の拍動リズム、神経伝導速度。
すべてを先読みする精密な運動によって、ダ・ヴィンチは弾丸すら避けてみせた。
蟇田が叫ぶ。
「なぜだ……お前は、医者じゃないだろうが!」
「“観る”ことから、すべての医術は始まる。
私が描いた《胎児の断面図》も、《心臓弁の構造》も、すべては“救う”ためだ」
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蟇田、瀕死に――
混乱の中で、蟇田は背後からの銃撃を受ける。
キブツの裏切り者、“医療兵ユング”が放った弾だった。
「……くそ……俺はただ、妹を……」
倒れた彼を、ダ・ヴィンチが抱え上げる。
「この者の生命を救うか? 捨てるか? 私が選ぶのか?」
彼の手のひらから、“アナトミア・コード”が浮かび上がる。
それは、ヴァイレクトの《CODE-V》すら参考にしたとされる、生体情報の根本原理。
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涼太、駆けつける
そこに、AIの医療記録網から蟇田のバイタル異常を察知した涼太が駆けつける。
「間に合ってくれ、お願いだ……!」
ダ・ヴィンチが問う。
>「若き医師よ。
この命に“救う価値”があるか――判断を、君に委ねよう」
だが涼太は迷わず答える。
「命に“価値”なんかつけない。救うって、そういうことじゃないんだよ。
俺が選ぶのは“見捨てない”こと。それだけだ!」
その言葉に応えるように、心臓ダイヤVer.3.6が反応。
死にかけた蟇田の心拍が、再び脈を打ち始める。
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ダ・ヴィンチの微笑
「そうか……“医術”とは、数値ではなく、“決意”によって支えられるのだな」
彼はゆっくりと後退し、次元の裂け目に消えていく。
>「私が残した図は、君たちが完成させるために描いた。
さあ、未来の医師たちよ――“真の診断”を続けなさい」
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