風
ふみその礼
第1話 風
ほんとは胸の奥に
風が吹いていること
知っていたんだけど
それは誰にも言えることでなく
ふと指の先から落ちそうになってた
自分のこころの刃物を
持ちなおして
そして だから それで
手の内を傷つけてしまい
切り落としてしまい
いつか誰かの口から漏れたのを聞いた
ふぅあぃ…というため息を
はじめて自分の口から聞いて
そのことに耐え難く恥ずかしい思いをし
そして なお
その醜態が誰の目にもふれないということを
突きつけられ
いまここにある自らは
追いつめられたのでもなく
憎しみの目を受けるのでもなく
ただひたすらあたりまえのように
わたしは忘れられていて
そんなとき
わたしたちおろかなホモサピを
受けいれてくれている
この藍色に光る折り紙世界が
なんか妙にホッとして音もなく
笑いあったりしてて
そしてそこにはずっと前から
あたり前に時に心が宿り
みなみなくっきりと影が影をおとし
思いきり世界は存在であり続けるのに
そこにただ浮かんでいる
思いちがいのホモサピの
わたしは
風というものを身に受けることだけが
せいいっぱいの願いだ
自らの身が五億万億の細胞にさらさら砕けちり
なんの思いもなく砂になり
そして
なれるわけのない風に
風に
なれることを
なれること ふぉ
どこまでもどこまでも
あ こ が れ
そして
風になることで
しにむかう道に
ひかりを見ようとしている
風 ふみその礼 @kazefuki7ketu
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