京都祓録記

伏見稲荷の社で“消えた観光客”をきっかけに、
高校生・安倍悠真は「視えてしまう目」を手に入れた。

霊がついてくる。鏡に映る“白い耳”。
現実感のない日常の中で、彼は祖母から告げられる。
「あんたは、安倍晴明の生まれ変わりや」

半信半疑のまま持ち帰った鏡。
夜、そこから現れた“白狐”との契約を機に、彼の運命は一変する。
白狐の名は、稲焔（いなほ）。
封印された千年の記憶を持つ、かつての式神。

鏡の中に囚われた魂。蘇る過去の契約。
そして、自らの“祓いの才”に向き合い始める少年。

幽霊が苦手な“元・普通の高校生”と、笑わない白狐。
二人の奇妙な日常と祓いの記録──
これは、京都の片隅で紡がれる、現代陰陽譚の始まりである。