概要
古代ローマにおいて、十字架刑は最も残酷でおぞましい処刑法とされていた。
ひと思いに息を引き取るのではなく、痛みに衰弱し、手足が一本ずつ萎え、命が一滴ずつ流れ出ていくほうを望む者などどこにいるだろう? 長く病み衰え、肩や胸の醜い傷が腫れ上がり、もはや元の姿をとどめず、長引く苦痛のなかで命の息をするのに、呪われた木に喜んで縛りつけられようという者がとこにいるだろう? 十字架に架けられる前に死んでしまう理由がいくつもあろう。
――ルキウス・アンナエウス・セネカ
――ルキウス・アンナエウス・セネカ