あなたが妖精を忘れても、ワタシは見守ってるから
- ★★★ Excellent!!!
角の折れた妖精チロが、角を拾って宝物にしてしまったジュリに返して貰う話です。アニメ映画っぽい
もちろん……素直に返してはくれません!
序盤は、童話のような詩的表現で何が始まるんだろうとわくわくしました。
だけどジュリが金銀財宝を要求したあたりで「あっ、幼年期ってキラキラしてるだけじゃなかった」って思いました。案外、危うかったんだろうなと。
そうリアルなんだ。
「もう寝なさい」は確かにイヤだった。
幼年期の描写がすごく繊細で、ひみつの冒険を毎日していたあの頃が瞼の裏に蘇るほどで、この作者さまは「小さな頃」をありのままま覚えているんだと、息を呑みました。
童話は残酷なものも多いですから、どんな結末でも迎えてしまいそうですごく怖ろしかったです。
ハッピーエンドが確約されてない緩急ついた展開は、感情を揺さぶってきて、何度も「どうしよう!」って不安になりますが、やわらかな感動へと導いて行ってくれます。
終わり方に含み。
チロは髪の毛で角を直さず、角が折れた状態でジュリをずっと見守ることを選びました。
「この子といたいから、折れたままでいる」って絵面的にカッコいい
それに、チロとジュリの距離が離れちゃうと、チロ、力を発揮できなくなる関係
ふたりは今後、離れるたびにピンチになって、そして何度も乗り越えてゆくのかな? 想像したらまたワクワクしてしまいますね
そして生涯見守るとなると、エンディングのあと、ジュリが大人になってからも含まれます
ジュリが出会いと別れを繰り返し、人間を信じられなくなった時、その時に、チロとの友情をふっと思い出せるのでしょうか
本当にこの二人の物語が、死の瞬間まで見えてきそうで不思議な気持ちになります
この二人の関係性はいったいなんと呼べば良いのでしょう?
大人になって見えなくなっても妖精はまだ傍にいるのかも
「そうだ、いいこと考えた。ね、チロ。その角、セロハンテープでくっつけてみない?」