この短編には色々なものが詰まっている気がします。だって読み終わった後、色々考えさせられることが多いのですから‥‥。
なんというか、ありきたりな言葉でいえば「自然の警鐘」、「理解し合えない悲しさ」、「人間の業」、「制御できない動物の感情」とか、言葉で言えばこんな感じなんですが、この小説の読了感って、そんなありきたりな言葉でかたずけられるものではないんですよね。なんというか、心に残るのは「おそろしさ」であったり、「寂しさ」であったり、「むなしさ」であったりするのですが、そんな感情を超えた何かが読み終わった後残る気がします。
あと、これ、人によって読了感が大きく変わるんじゃないかな? と思います。少なくとも最後の締めの部分は、作者さまが、読者に考える余地を色々残してくれているような感じがしてまして……。
って、とりあえず、全部で6000字くらいの短編です。試しに読んでみてはいかがでしょうか?
近年(今年は特に)、熊が人里に降りて来て人を襲う事件が多発しています。
にもかかわらず、それを駆除する行為を「可哀想」などと非難する輩が多くて、正直「何を言ってるんだ」と呆れることもしばしばです。
野生動物には三度の飯など存在しません。彼らは常に飢えています、故に食えるチャンスがあれば躊躇するわけがないのです。
それが例え農作物でも、家畜でも、そして、ヒトでも。
そんな熊の恐ろしさを、ひとつのドキュメンタリー風に描いたこの作品。残酷な悲劇ではあります、しかしこれは現実に起こりうるどころか、すでに現在進行形で起こりつつある状態でもあるのです。
熊が出没する地域にお住まいの方が、くれぐれも被害に会わないことを心から祈りつつ、この小説をレビューさせて頂きます。