トラウマもの。熊ホラーの名作。人も熊も健やかに愛していただけ

毎年熊が現れる時期になるとPVが上がるという、熊の事件を題材にした名作小説。
今年は特に熊の事件が多いが、熊に襲われる描写が容赦なく書かれている。人が「食べられて死ぬ」という文明社会では忘れ去った恐怖と屈辱が突きつけられトラウマもの。

読んでいて戦慄したし、山間部にいくのが怖くなるほど。

栗林の木から始まる微笑ましい冒頭は映画のようにも感じるが、忍び寄る惨劇は現実に何度も起こっている事件である。5000文字と少ないながら、一話読むごとに恐怖が大きくなるため迫力がある。三話、四話、五話と確実に最悪になる展開だが、想像を絶する恐怖のために結末を知らずにはいられずとうとう読み進めてしまった。父親が一目散に逃げ出してしまったことが極限状態での行動として印象的だった。

特筆すべきは熊のことがよく調べられていることで、豊作と凶作、狂犬病に翻弄される母熊の姿は見ていて辛かった。絶対的な悪と攻撃される母熊が一頭で子を守り、助けも呼べず背負ってきたものと悲鳴を知った。
悪ではないことが正義ではない。

パニックホラーで終わらず、第六話はオチは極めて切ない。

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