魔法の羽ペン

たい焼き。

第1話 不思議な羽ペン

 ある時、夢を見た。


「あなたにこれを授けます。どうか有効活用してくださいね」


 白くて長い髪のおじいさん?おねえさん? 光でぼやけてわからない。その人が着ていた白いローブのどこかから、ちょっと立派な筆箱みたいな箱を貰った。





「……なんか変な夢を見た気がする……」


 目覚まし時計を見たら、目覚ましがなる10分前。いつも目覚ましでも起きられなくてママに怒られるのに……。

 今日は、自分から起きていって驚かせちゃお~っと。

 あたしはベッドから起き上がって、小学校へ着ていく服へと着替えようとクローゼットから洋服を出した。

 そのまま着替えて、忘れ物がないかランドセルをチェックしようとしたとき勉強机の上にある箱に気が付いた。


「っ、え……」


 それは夢で見た立派な筆箱だった。


「なんで……? え~……」


 昨日置いた記憶なんかない。寝てる間にママかパパが置いたの? わかんない。

 でも中は何が入っているんだろう?

 気になってフタを開けた。中には羽ペンが10本。


 ……何コレ。


 羽ペンなんて、マンガとかアニメでしか見たことないんだけどこんな感じなんだ。でもこれって確かこのままじゃ書けないよね。墨汁とかでもいいのかな?


「優里~! 学校遅刻するわよー!!」

「えっ!?」


 いつの間にか時計はいつもママが痺れを切らして怒り出す7:30を指していた。


「あーもうっ。せっかく今日は驚かせようと思ったのにっ!」


 墨汁のことなんてすっか頭から抜けたあたしはランドセルを持って1階のリビングへと駆け下りていった。



お怒りには変わりないけど、いつもよりあたしが簡単に降りて行ったせいか。ママが少しきょとんとしてたな。

ふふふ、と内心笑いつつ教室まで着いたあたしはランドセルを教室の後ろにあるロッカーへしまった。


それからいつもと変わらない学校が始まって、友達と楽しくおしゃべりしながら過ごす。


今日の午後は図工の時間だ。

あたしはロッカーに置いていた画用紙を取り出すために、ランドセルを引っぱり出した。


「あ」


その時にランドセルのフタが開いてしまった。中からあの筆箱が落ちてきた。

え、なんで? 朝、ランドセルの中になんて入れてないのに!

何か気持ち悪い……。けど、とりあえずしまわなきゃ……。


あたしはなるべく触る部分を減らして、ランドセルの中に乱暴に入れてフタをした。


それから授業中、あの筆箱のことが気になってしょうがなかった。

何でランドセルの中に入ってたのかな? 全然入れた記憶なんてない。もしかして、ママがいたずらで入れた? いい大人なのに? でも、それ以外ランドセルに入る理由わけなくない?


結局、帰りの会まであたしの頭の中はあの筆箱のことでいっぱいだった。

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魔法の羽ペン たい焼き。 @natsu8u

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