概要
喪失の痛みを抱えた青年が、地図に載らない村に降り立つ。
限界集落・霞巫峰村。そこで出会った三人の少女とその母。
村に伝わる妖しい因習の現代化に立ち会いながら、現実と夢幻の境界は次第に曖昧になっていく。
秘神と厄神。惨劇の記憶。止まぬ雪に閉ざされた図書館。
そして、子を成すための白き恵み。それは祝福か、あるいは呪いか。
やがて繰り返される時間の中で、彼は選択を迫られる。
しかしその行為が彼の中の闇を震わせ、新たな悲劇を生み出すと気づいた時、彼は何を掴み、何を零すのか。
聖と欲望、伝統と現代化、共生と搾取。
これは弱さを抱えた者たちの「生き直し」の物語ーー。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!それは、闇の中にほのかに浮かび上がるもの。そして、声なき声で叫ぶもの
なんにも考えずに読み始めてしまうと、その文章力の高さに、まず、驚かされ、
「おー、文芸じゃ、純文学じゃ」
と、じっくり味わいながら楽しんでしまうわけです
ところが、ですよ
途中で、唖然、呆然、
「なにこれ、めっちゃエンタメじゃん」
と、なります
そこで、わたくしのような迂闊な者は、ようやく、紹介文を確かめに行き……
『タイムリープ』
『微クトゥルフ要素』
『ハーレム??』
付けられたタグに、
「あ〜」
と、うなずくことに
エンタメの骨組みに、文学の肉付けをした、とてつもない小説であります
ひとりひとりの登場人物が、必死にもがき、苦しみ、「生きている」
なんで、この激情を描いた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!洋楽、あるいは絵画のように
この物語には、搾取や共生、生と性、伝統と現代化、善悪、弱さ、葛藤など、様々なテーマが織り込まれ、ただの因習村ものではない、ただのハーレムものでもない、多層的な世界が広がっています。
ここで『なんだか難しそう……』と思って読まずにいるのは、あまりに勿体ない。
私はこの物語を、洋楽や絵画のように楽しんでいました。……限界集落の物語なのに洋楽、とは、おかしな話なのですが。
ストーリーを追っていると、ハッと目を見張るようなカッコいい表現が現れて、繰り返し味わいたくなる。
次第に輪郭が掴めて、だんだん理解できてくる。
各キャラクターの気持ちに寄り添いたくなる。見守りたくなる。
展開も加速していき、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!善意とエゴに対峙せよ
読みごたえのある本格的な文芸に腰を据えて対峙したい人に薦めたい。
読み飛ばせない。文章の一つ一つが作品に不可欠である。一話目から引き込まれた。
私たちは心の奥底に封じ込めたエゴや後悔や欲望や諦念をもっている。それらは黒く澱んでいる。作者は私たちの肩に静かに手を添えて、抑圧してきたその澱みに向き合わせる。
妻を亡くした三十代の結人が主人公である。彼は妙齢の少女たちとその母親たちとかかわりながら、「お神乳」の因習が続く限界集落に生きる。
性と生に真正面から向き合い、結人は苦悩する。そして行動する。支配・搾取・隷従の構図が物語の根底をどろどろと這う。特に「善意はエゴの隣人」という表現には唸っ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人を選ぶ作品に感じます。それでも、見つけたあなたに読んで欲しい。
難解な表現や、密な文章に最初は面くらいましたよ。ただ、いつの間にか最後まで読んでいました。
この小説の魅力は複雑すぎて、私の拙い知識と文章能力では表現出来ないことが悔しいです。
実際、レビューをこの形にするのも悩みました。ただのレビューなのに難産だったんです。
私はカクヨムのランキング作品が食傷気味になってきて、何となく掘り出し物を探したらこの作品を発見しました。そんな作品に、自分の不安定な心を暴かれるとは露知らず、軽い気持ちで読み始めました。
今まで、自分自身の行動指針や、精神の芯の部分をプラスに変えてくれた小説はたった4作品だけです。その5作品目が、この星が2桁も無い小説だっ…続きを読む