四通目

 二十歳の誕生日、おめでとう。優人。


 優人がこれを読む頃、お母さんは、もうこの世に居ないと思う。寂しいけど、お母さんは自分が長生き出来ないってこと、昔から分かってた。

 でも、正人さんと出会って、優人が産まれて、お母さんはずっと、幸せだったわ。


 優人は、どんな大人になったかな?

 お母さんが元気だったら、勉強のこと、友達とのこと、恋愛のこと。たくさん話したかったのに、できなくてごめんね。

 でも、お母さんがいなくても、きっと優人は大丈夫。優人にはそれだけの強さがあるんだから。


 ケンちゃんやマリちゃんとは、仲良くしてる?

 小さい頃からの友達って、大人になってからも大切な存在になるものなのよ。

 それに、優人みたいに一人で抱え込んじゃう子には、あの二人みたいな、しっかり者がついてないと、駄目なんだから。


 お父さんとは、ちゃんと仲直りできた?


 お父さんはね、体の弱いお母さんや、優人の将来のために、毎日毎日、夜遅くまで働いてるから、話し合う時間もなかなかとれないし、優人のこと、寂しくさせちゃってるかもしれないけど、きっと、優人が大人になって、自分の家族を持つ頃には、お父さんの気持ちが分かる時が来ると思う。


 その時は、お父さんの今までの苦労を、目一杯、ねぎらってあげるのよ。


 お父さんはね、いつも安い焼酎ばかり飲んでるけど、本当は日本酒が好きだから、覚えておきなさい。


 もっともっと、色々、いまの優人に聞きたいことがあるのに、お母さんがそれを知ることが出来ないことが、書いている今、とても辛いの。


 優人はどんな学校を出たのかな。

 優人はどんな会社に入れたのかな。

 優人には、どんな素敵な奥さんが居るのかな。


 もっと、もっと教えて欲しい。

 もっと、優人の人生を見ていたかった。

 もっと、もっと。


 だからね、優人。あなたはお母さんの分もしっかりと生きて、たくさん友達を作って、愛する人を見つけて、幸せになりなさい。


 これが、お母さんからの、最期のお願い。

 あなたが素敵な人生を歩むことを誰よりも強く、強く願っています。


 あなたの母、優香より。

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