「練り込み具合がとってもエグい!」
本作を評するなら、この言葉が一番しっくりくるのではないかと思います。
いわゆる『意味怖』ジャンルに属する作品です。何かしらの不穏さが漂う物語を読み、そこで一つの終わりを迎える。ただぼんやり読むだけでは、普通にストーリーが幕を下ろしたように見える。でも、よくよく内容を見据えてみると、実は隠された意味が……。
そういう裏の意味を考察するという、「考察型ホラー」と呼ぶべき意味怖。
ネットなどで流行したこのジャンルですが、今回のこの作品は巷の意味怖とは一線を画すクオリティがあるものです。
なんといっても、「ミステリーとしての練り込み具合」が非常に良く出来ているのです。
これをそのまま本格ミステリ作品として提示したとしても、かなりの高評価を得られるような「裏の真相・ロジック」が作り込まれているのが特徴です。
思わぬ専門的な用語がひそかに提示されていたり、またはどんでん返し的な伏線収束具合を見せてくれたり、ミステリー読者が喜ぶような仕掛けが各所で見られます。
個人的に特にオススメしたいのは、『万引き』と『丁字路の祠』の二話。それと『深夜零時の悲鳴』が別ベクトルのインパクトがあって楽しかったです。
ホラーな超常設定からヒトコワ、それからひそかに笑える話など、エピソードごとに異なる楽しさが用意されています。
それぞれの話に解説も用意されているので、謎解きが不得意な方でも安心して楽しめる設計になのが嬉しいところでした。