海辺で拾ったマネキンの手。それがもたらす『禍』とは……

 全編を通して、ゾワゾワと来る薄気味の悪さに満ちていました。

 八十歳近い母と一緒に海辺を訪れた主人公。母はその場で『流木』を見つけ、拾って帰ろうと言い出す。
 しかし、その流木と見えていたものは、『マネキンの手』だった。

 その日から、母は何かとおかしなことを口走るようになる。『悠一』がそこにいると。それは死産したはずの主人公の兄の名前だった。

 そこから坂道を転がるように、主人公の日常は『正体不明の何か』に侵食されていく。

 一体何が、彼の身に降りかかっているのか。マネキンの手の正体とは。悠一との関連は?
 不可解な出来事の連鎖の先で、彼にはどんな『結末』が待っているのか。

 ホラーならではの『正体のわからない恐怖』の描かれた作品。不穏な想像力を刺激される、とても怖い一作でした。