憑依のことなら私にお任せ! 遅念先生の『呪詛』講座
- ★★★ Excellent!!!
バリエーションがとても豊富で、読む人をどんどん楽しませてくれます。
物語は『憑依』がとにかくテーマとなっており、それを巡る多種多様な人間ドラマや、それに関連して起こる事件が描き出されます。
主人公となるのは、大学で教鞭をとる遅念(ちねん)。彼は学生たちに『憑依』、『降霊』についての授業を行い、彼のゼミは『呪詛ゼミ』という通称を持っていた。
そんな憑依のスペシャリストである遅念のもとに、様々な人々が相談に来る。
「異世界転生に憧れ、死後は憑依によってハイスペックな若者の人生を謳歌したがる男」、「死んだ娘の魂を人形に憑依させ、再び一緒に暮らしたがる母親」
霊現象に悩まされる人々の話だけでなく、憑依という現象を使うことによってなんらかの思惑を実現したがる者も登場します。
そんな数奇な精神の持ち主たちが、実際に「憑依現象」を利用し、その先で何が起こるのか。
作中で扱われる霊現象を「憑依」というテーマのみに絞ることで、そこから作り出せる多種多様なものをあえて引き出してみせる。限定を行うことにより「世界観」のカラーの独自性を高め、更にその中での広がりを提示する。
描き出される一つ一つの話の個性が強く、展開やオチも秀逸。一度読み始めたら目が疲れるまでいくらでも没頭していられる作品です。