『当たり前』な毎日の行動。それまでは別に、大切だとも思ってなかった……

 切ない気持ちになるホラー作品でした。

 「今から帰る」と、電話でいつも短い連絡をしていた主人公。それが日々のルーティーンで、特に細やかな気遣いとかを示すようなことはしない。
 でも、それが彼にとっての「当たり前」となっていた。

 そんなある日、家に帰ろうとしたところで、彼はある異変を察知する。

 本作でテーマになっているのは、何よりも「当たり前」という言葉だと読み解けます。
 特に意識もせず、ごくごく当たり前のこととして繰り返す行動。ほとんど意図せずにやっているため、「今から帰る」を電話したことも、その一分後には忘れてしまうようなもの。

 こういう日常の当たり前は、普段意識することがないからこそ、「当たり前じゃなくなった時」に妙な尊さを持つものでもあります。だからこそ、自然と人の心に沁みこむものでもある。

 ラストで明かされる「真相」から、彼にとっての「当たり前」だった習慣がどれだけのものだったのか。衝撃の感覚と共に、しみじみと感じさせられるものでもありました。

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