昭二の母は、気になったものがあると何でも拾ってくる。
高齢になった今も、それは変わらない。
同居している昭二は、ある日突然「海に行きたい」と言い出した母を海に連れていく。
その海で、母にとって気になるものが目に留まった。
何か長い棒のようなもの。
持って帰ることになるだろう。でも、あとでこっそり捨てようとしている昭二。
そう、それがいつもどおりの日常。捨てればいいだけだから、拾って構わない。
昭二は拾って母に渡してあげる。
母は流木と言ったが、それはくすんだマネキンの腕だった。
マネキンの腕を持ち帰ってから、昭二の日常は壊れていく。
壊れた日常はどこへ向かうのか。どこに行き着くのか。
最後まで読んで、確かめてほしい。
全編を通して、ゾワゾワと来る薄気味の悪さに満ちていました。
八十歳近い母と一緒に海辺を訪れた主人公。母はその場で『流木』を見つけ、拾って帰ろうと言い出す。
しかし、その流木と見えていたものは、『マネキンの手』だった。
その日から、母は何かとおかしなことを口走るようになる。『悠一』がそこにいると。それは死産したはずの主人公の兄の名前だった。
そこから坂道を転がるように、主人公の日常は『正体不明の何か』に侵食されていく。
一体何が、彼の身に降りかかっているのか。マネキンの手の正体とは。悠一との関連は?
不可解な出来事の連鎖の先で、彼にはどんな『結末』が待っているのか。
ホラーならではの『正体のわからない恐怖』の描かれた作品。不穏な想像力を刺激される、とても怖い一作でした。