うつろうもの、変わらぬもの

時間というものは流れゆく。ある一本の桜の樹が、その流れを見つめていた。
激動の時代といえば、その通りなのだろう。その中で考えればほんの少し、それでも桜と人とが心を通わせた。
人の世はうつろう。人は去る。けれど変わらないものもある。

人と桜であるのだから、そこに名前をつけることは無粋なのかもしれない。けれどこれは愛にも恋にも似た、そういうものなのだろうと思う。
そしてそれはきっと、奇跡のような実を結ぶ。
流れてゆき、ゆきて戻る。その最後にたどり着き、「ああ、美しいな」と、そんなことを思ったりした。

あなたは、どのような名前をつけるだろう。もちろんつけることが無粋ならば、名前のないままでも構わない。
ただこの美しい一遍の御伽噺を堪能して貰いたいものである。
ぜひ、ご一読ください。

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