6本目:邪神に供物を捧ぐ

「ぅうーーっ! ぅうーーっ! ぐすんっ」

「ごめんですって、許して! ねっ?」


 私は女の子の汚れてしまった下半身をキレイにしてあげたあと、色々事情を聞こうと話かけたですが・・・彼女は拗ねてしまい、話しかけても「ぅうーーっ!」しか言ってくれなくなったです。


 今はタコの足で自分をぐるぐる巻きにして、団子になってるです。


「これ、隠れてるつもりですかね? ねぇ、お尻が丸見えですよー?」

「ぅうーーっ!」

「拗ねてる姿も可愛すぎるんですけど!」


 頭隠して何とやら。

 ぐるぐる巻きになったタコ足の下からは、可愛いお尻がコンニチワしてるです。


 ・・・可愛い。お尻に触ったら流石に怒られそうですね、我慢するです。

 今は何よりも先に対処しなきゃいけないことがあるんすよね。


 ──この子、パンツ履いてないです。


 今の姿勢は、ひっじょーーにヤバいですっ! 色々見えちゃいけないものが丸見えです。

 今居るのが私で良かった。もし男だったら、この子はお嫁に行けなくなるところだったです。


「ねぇ、お姉さんとお話しようよー。そのタコ足はどうしたんです? もしかして、おじ様の知り合いです?」

「ぅうーーっ、ぅうーーっ、ぐすんぐすん・・・」

「う〜〜ん、どうしよう?」


 女の子は頭隠してお尻をふりふり──誘ってるんすかね?

 やっぱりちょっとくらい触っても・・・っと、いけない、いけない。


 やっぱりファーストコンタクトがダメでしたね。

 私のイタズラ心のバカ野郎っ! どうして我慢出来なかったんすかねっ!


 私が会いに来たおじ様はここ《邪神の呼び声》が出来るより前、何ならこの場所に住んでいる、私と同じ宇宙人です。


 その姿故ここから居なくなる筈が無い人。なのに気配が消えてて、代わりにおじ様と同じ色のタコ足を持った少女が居る。

 絶対に関係者だと思うんすよねー。


「本当にどうしよう・・・子供を泣き止ませる方法なんて知らないですよぉ」


 このくらいの子って何したら笑ってくれますっけ・・・ 「いないいないばあ」とかしたら良いんすかね? それとも、ガラガラとかですかね?


 私も頻繁にここには来れない、今日中に話を進めたい。

 あとパンツを履かせないとっ!


「う〜〜ん、う〜〜ん・・・あっ、そうだっ!」


 私は最後の手段とばかりに、ある物を探して腰のポーチをまさぐった。


 ◆


 僕はもう何もわからなくなって、恥ずかしくて、タコさんの足に隠れました。


(おもらししちゃったっ、おもらししちゃったっ!! 絶対お母さんに怒られるっ、「わるい子」って怒られる!! やっぱり、お外はお母さんとお姉ちゃんが言っていた通り怖いよぉ! 助けて、お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ!!)


 いきなり後ろから「ばぁっ!」ってされて、頭が真っ白になって、気付いたらオシッコがもれちゃいました。

 しかも知らない人にキレイにして貰っちゃいました。


(このお姉さんはダレ? もしかして、この石のお家の人? 「出ていけ」って言われちゃうかもっ!? ここ以外、僕は行くところがない。お姉ちゃんもお母さんもどこに居るか分からないし、今のままじゃ会えない。怖いよぉ、お母さんお外に出てごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)


 分からない、何も分からない。

 また涙が出てきたとき、何だかおいしそうな匂いがしました。


「すんすんすん・・・」

「ほ〜〜ら、美味しいブロッククッキーですよー! 食べたかったら出ておいでー、チチチ・・・」


 タコさんの足を少しひらいて見て見ると、目の前にいい匂いのする四角いのがありました。


 ──あれ、何だろう?


(クッキー? クッキーってお姉ちゃんが前に言っていた『おかし』?)


「・・・ゴクリ」


 ──たべてみたい。


「食べたいですか? 良いんですよ、食べても! ただ、お姉さんもゴメンナサイってしたいから、お顔見せて欲しいですよー」

「・・・たべても良いの? 怒らない?」

「何で怒ることがあるんですかー、お話したいだけですよ!」

「たたかない? けらない? 死んじゃえって言わない?」

「・・・それを誰かに言われたんですか? お姉さんは絶対に言いませんよ、君みたいな可愛い子に言えるわけ無いですよー! ほら、あ~〜ん」


 ちょっとお顔を出せば目の前にクッキー・・・ゴクリ。


「・・・あ〜ん(サクッ)──っ!? もぐもぐもぐもぐっ」

「まだあるから、落ち着いて食べても良いですよ。それよりほらっ、こっちおいで〜〜」

「うんっ!」

「はぅっ! なんて素晴らしいロリッ!? は、鼻血が・・・」


 お姉ちゃんからは、わるい人には近づいちゃダメって言われています。

 でもこのお姉さんは、おかしをくれるって言っています。だからいい人だと思います。


 僕はタコさんの足から出て、お姉さんのおひざの上でクッキーを何個も食べました。


「おいしいっ、おいしいっ、おいしいっ!」


 食べたことがない、幸せな味。

 おいしいっ、おいしいっ、僕は夢中で食べました。すると、クッキーを持ってる手にあったかい水が落ちてきました。





 ──ポタッ・・・ポタッ。






 落ちてきたのは、僕の涙でした。


 美味しいものを食べたら涙が出る、僕はそれを初めて知りました。


 ◆


「ぐすっ・・・お姉さん、クッキーありがとう! おいしかった・・・ぐすっ、おいしかったよぉ・・・」

「お口に合って良かったですよ! それにしても、携帯食のクッキーでこんなに喜ぶなんて、君は今までどんな生活を送っていたんですか・・・あっ、私はポテ子って言うですよ。君の名前は? どうしてここに? そのタコ足はどうしたんです?」

「僕は九冬 流々、うんとね色々あってね、それでね、こうなったの!」

「えっ、『くとうるる』ですか?」

「うんっ!」

「そうですか・・・」



 このお姉さんは、ポテ子お姉ちゃんというお名前みたいです。

 僕はポテ子お姉ちゃんに、川に落ちてここに流れてきたことを話しました。


「流々ちゃんみたいな可愛い子が居なくなったら、絶対話題になる筈ですよ。でもそんな話聞いたこと無いんす。私がロリの話題を聞き逃すなんてあり得ないですから、捜索願も出て無い筈です」

「んー、よく分からない!」

「分からないですかー、じゃあ仕方ないですね! でもお母さんとかは心配してるですよね?」

「・・・・・・」


 お母さんは・・・心配してないかもしれません。

 きっと怒ってる、外に出ちゃダメって言われてたのに出たから。きっと「悪い子」って思ってると思います。


「流々ちゃん、どうしたんすか? お姉さん何でも聞きますよ?」


 僕を心配してくれるポテ子お姉ちゃん。

 僕はたぶんお母さんが心配していない事、たぶん怒ってる事を言いました。


 今までお母さんとどう過ごしていたのかをお話するたび、ポテ子お姉ちゃんのお顔が怖くなっていって最後に僕の事をギュッとしてくれました。

 とってもあったかいです、でもお姉ちゃんみたいに柔らかいお胸はなかったです。


「流々ちゃん、いっぱい頑張ったんすね。偉いです! よしよし〜!」

「あぅあぅあぅっ!」

「いい子いい子。あぁ、やわっこい! ちっちゃいっ、可愛いっ、最高ですっ! 至福ですっ! でへへへ〜」


 お姉ちゃんと違う、力の強いナデナデに頭が振られます。でもとっても気持ちが良いです。


「ポテ子お姉ちゃん、ふしぎっ。お姉ちゃんと違うのに、お姉ちゃんと同じ匂いがする!」

「そうなんです?」

「うんっ! あと、すごく──おいしそうな匂いもする・・・」

「・・・え゙っ!? た、食べちゃダメですよっ!?」

「うん、ガマンする」


 ポテ子お姉ちゃんが変な笑い方をしています、僕なにか変なこと言ったかなぁ?


「ま、まぁ、私としてはっ! 流々ちゃんなら、性的に食べて貰う分にはっ、全く問題ないと言いますか──是非、宜しくお願いしますっ!」

「せーてき? おいしい?」

「いえ・・・冗談です!」


 ポテ子お姉ちゃんが何か変だけど、まぁ良いかなと思って気にしない事にしました。


「流々ちゃん、ここで流々ちゃんみたいなタコ足持ったでっかいモンスターみたいなの見ませんでした?」

「ううん、分からない」

「そうっすかぁ。確かにあの姿を見て人間が正気を保てるとは思えませんし、多分見て無いんすね」


 ここに流されたとき、目が見えるようになった時には誰も居ませんでした。

 それにそんな大きなモンスターがいたら、僕は食べられちゃって死んでると思います。


「やっぱりおじ様は何処かへ行っちゃったんすかねぇ・・・宇宙うえに帰った?」


 ポテ子お姉ちゃんは何か色々考えているみたいです、言っていることが難しくて僕にはよく分りませんでした。


「ねぇ、ポテ子お姉ちゃん。僕はお姉ちゃんに会いたい・・・それで、お姉ちゃんとお母さんと暮らしたい」


 僕は三人でなかよくニコニコして暮らしたい。


「お母さんもですか? そんなに酷いことをした人間なんて、ほっとけば良いんじゃないです? なんなら私がお母さんになってあげるですよ!」

「ううん、お母さんが僕に痛いことをしたのは、僕がわるい子だったからだよ。僕がいい子になればニコニコしてくれるよ! それにやっぱり、お母さんはお母さんだから・・・」

「流々ちゃん・・・」


 ポテ子お姉ちゃんがまた僕をギュッとしてくれました。

 胸いっぱいにポテ子お姉ちゃんの匂いがします。


「分かりました、お姉さんが流々ちゃんのお姉さん・・・と、お母さんも探してあげます! たぶんね(ボソッ)」

「ほんとっ!?」

「うんうん、任せて下さい! お姉さんはこれでも人探しが得意なんすから!」

「あっ・・・ぁうぅ~、でもこのままじゃ会えないよぉ」


 僕は前とはちがうお顔になっただけじゃなくて、タコさんの足も生えています。

 もしかしたら・・・お姉ちゃんにきもちワルイって言われちゃうかも。それはイヤだ。


「私は流々ちゃんみたいなタイプの形態じゃないんすよね、だから詳しくはないんすけど何か方法がないか調べてくるですよ!」

「ありがとうっ、ポテ子お姉ちゃん!」

「いえいえ、どういたしまして〜。でへへへ」


 それからポテ子お姉ちゃんと一緒に寝て、起きたら帰ってしまいました。とってもお胸がギュッとなります。


 またすぐ来てくれるって言ってました。

 早く「すぐ」が来て欲しいです。

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