5本目:邪神の野望と邂逅
その日、ご飯を食べ終わった僕は、ぼーっと上の方を見ていました。
特に何かしているわけじゃ無いです。
これは最近分かったんだけど、お腹いっぱいご飯を食べると眠くなるみたいです。何ででしょう?
お母さんといた時は、お腹いっぱいご飯を食べた事がなかったです。食べても、叩かれてすぐに吐いていたので、いつもお腹が減っていました。
だから、お腹がいっぱいで眠くなるなんて不思議な気持ちです。すごくフワフワします。
おっきな石に座って足をぷらぷら、一緒にタコさんの手足もゆらゆら。
このタコさんの手足は何本あるんでしょうか? 実は僕にも知りません。
一度数えてみようかと思ったのですが、お尻と背中に生えてるの以外よく見えないので諦めました。
全部同じに見えるんだけど実はちょっと違うのが何本かあって、顔のすぐ横に生えてる二本と頭の後ろの何本かがが他より長くて先っぽが三角。少しだけ動かしやすいんです。
僕はこの何本かだけを「手」、他を「足」と呼んでいます。
タコさんの足も全部そこそこ長くて太い、だから引きずって歩いています。
持ち上げることも出来るんだけど、そしたら重すぎて歩けなくなっちゃいます。
まぁ痛くないし、このままで良いかなって思います。
あと、自分の足が疲れたら、代わりに歩いて貰っています。
「ふぁああぁぁ・・・ん。むにゅむにゅ・・・」
ぼーっとしながら思い出すのは、牛さんにいじめられていた女の人のこと。
いっぱいの人の声が聞こえたから逃げちゃったけど、あの後大丈夫だったかな?
お友達と会えたでしょうか?
やっぱり誰か来るまで居たほうが良かったのかな?
でも、怖い人だったら怖いし、会ったら泣いちゃうかも・・・。
お姉ちゃんに会いに行くために、誰かとお話する練習しなきゃいけません。
お姉ちゃんも言ってました、練習は大事だって!
「会ったとき、お姉ちゃん僕だって気付いてくれるかな? 『だれ?』って言われたりしないかな? もし言われたら・・・泣いちゃう・・・かも。ぐすっ」
考えただけで涙が出そうになりました。
お姉ちゃんが言ってました、男の子はすぐに泣いちゃだめだって。
僕も男の子だから泣いちゃだめなんです。あっ、でも今は女の子だから良いのかな? ・・・お姉ちゃんに会ったときに聞いてみることにします。
「お姉ちゃん・・・僕、ここに居るよ。会いたいよ・・・会ったらギュッとしてほしいな。頑張ったねって、ほめてほしいな。お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・・・・お母さん・・・」
あの怖い人に見つかった日、お母さんが居ませんでした。
コイビトさんは血だらけでした、お母さんはケガしてないと良いな。
僕がいい子にしてたら、お母さんは迎えに来てくれるでしょうか?
いつか三人で、ニコニコしながら仲良く暮らしたいなって思います。
「お母さん・・・お姉ちゃん・・・すぅすぅ・・・」
気付いたら、僕はタコさんの足で丸まって眠っていました。
お姉ちゃんの夢は見れませんでした、ちょっとがっかりでした。
◆
それから何日か、僕はお肉を捕まえたり、お野菜とか果物を採ったりしていました。
この身体になってからお腹がよく空くようになりました。というよりも、いくら食べても何かが足りない気がします。
そういえば、少し前にまた人を助けたときに、その人からすごく・・・すごく、いい匂いがしました。
──「食べたいな」って思いました。
でも、また人の声が聞こえたので、結局食べずに逃げちゃいました。
あれは何の匂いだったんでしょう? あの匂いを嗅ぐと、とってもお腹がなります。
食べてみたいけど、勝手に食べると怒られそうなので、頑張ってがまんします・・・じゅる。
捕まえたお肉にピリピリする果物を塗ってから焼いて食べると、すごく美味しいです。「コショウ」っていうのに似ている気がします。
ただ、この果物はあんまり見つけられないのと、見た目が赤と紫色でトゲトゲしていて怖いです。
あと、こぼした所が「ジュッ」って鳴って溶けちゃいます。なので、お姉ちゃんのお洋服にこぼさないようにしないといけません。
「もぐもぐ・・・ピリピリ、美味しい」
この果物とか、「しお」みたいな石とか使った時は、いつもよりお腹が膨らみます。
いつも見つかればいいのに。
「もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・んっ?」
・・・誰かいます。
この石のお家のところには、今まで誰も来たことがありません。
上の、すごーく上の方でしか人を見かけたことがありません。
「どうしようっ、どうしたらいいんだろうっ!?」
どうしたら良いか分からなくて、僕は近くの柱の後ろに隠れました。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・うん、居ます。
上に行く道のおっきな穴の所、暗くなっている所に誰か居ます。
──じー・・・
見えないけど、居ます。
どうしよう、怖いよぅ・・・「帰って」って言ったら、帰ってくれるかな?
◆
最下層に到達した私は、そこにおじ様の気配が無いことに動揺していた。
「おじ様に会うために下まで来たのは良いんですが・・・おじ様の気配が無ぇですね。これは本格的にヤバい事が起きてるかも知れません」
おじ様が居なくなるなんて事、今まで無かったですからねぇ。はて、どうしたものやら・・・。
「おじ様は私達の中で唯一
居なくなったおじ様、そして──先程から遠くでこちらをチラチラと見ている何か。
そちらに目を向けると、柱の陰から頭を出したり引っ込めたり。こちらを見てはビクビクと震えている。
「何あれ、メッチャ可愛いんすけど」
遠くてよく見えないがたぶん人間の子供でしょう。
その動きが小動物のようで愛らしいです。
しかし、どうしてここに人間が? ここは人類未到達エリアだし、子供が来れるような場所じゃない。
それにあの子、私が見えている・・・まるで虚空を見つめる猫のようです。
「おじ様も居ませんし、あの子に聞くしかないですね。怖がってるみたいだし、ビックリさせない様に近付かないとですね」
私はスルスルと影を移動しその子供に近付いた、そして・・・。
「ばぁっ!」
「いゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!?!?!?!?!?!?」
──つい、いたずら心が動いてしまったです。
「ご、ごめんですってっ! そんなにビックリしなくても・・・」
「あっ・・・あっ・・・あぅぁ・・・」
女の子は余程驚いたか、怖かったんでしょう。
ガタガタと震えて、声にならない声を出していました。そして・・・。
──じょわ〜・・・
「あっ・・・ご、ごめんです・・・」
「うっ、うぇっ、うええええぇぇぇぇぇんっ!!!!!!」
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