14本目:邪神回復と姉出陣
──むちゅーーっ!
「もごっ!? もごごごっ!?」
(ポテ子お姉ちゃんっ!? 何っ、何やってるのっ!? って、あれ? 何だか力が・・・)
いきなりお口にちゅーをしてきたポテ子お姉ちゃん。ビックリしてはなれようとしたけど、お顔を手でつかまれてて動けません。
そしたら、何かが身体から抜けていくかんじがします。
──むちゅ~~ちゅるるるぅぅぅぅぅ・・・ちゅぽんっ!
「ふぅ、ご馳走様でした!」
「ほへぇぇぇ・・・」
「うぅ〜〜ん、甘露っ! うふふふ、私のファーストキスを捧げてしまいました! これはもう私を貰って頂くしかないですね!」
「ぽ、てこ・・・おねぇー、ひゃん・・・?」
アタマがぼーっとします。ただ、あついのが無くなりました。
これがポテ子お姉ちゃんの言っていたエネルギーを抜くっていうことなのでしょうか。
「さて流々ちゃんどうですか、ママのキスの味は・・・じゃなくて、身体の調子は? おぉ、身体の模様が無くなってますね!」
「あっ、ホントだ! おなかの下の方がぎゅーってしなくなったし、もぞもぞしなくなった! ポテ子お姉ちゃん、ありがとう!」
ちょっとだけ力が入らないかんじだけど、それでも充分うごけます。
それにポテ子お姉ちゃんが言ってたみたいに、手とかタコの足にあった変な色がなくなってます。
(色が取れなかったら、どうしようかと思った! あのままじゃ、お姉ちゃんに会えないもんね!)
うれしくて、もう一回ポテ子お姉ちゃんにお礼を言おうとお姉ちゃんの方を見たとき、僕は気づきました。
──ポテ子お姉ちゃんの手と足が、真っ黒になっていました。
「ぽぽぽぽポテ子お姉ちゃんっ、手と足が何か変だよっ!?」
「あぁ、流々ちゃんのエネルギーを吸い取ったからですね。大丈夫っすよ、
「元のすがた?」
お話している間にも、ポテ子お姉ちゃんのお手々と足は真っ黒になったところからケムリみたいのに変わっていきます。
「ポテ子お姉ちゃんっ、お手々と足がなくなったよっ!?」
「だーいじょうぶ、大丈夫っす。ほら元に戻るっしょ?」
ポテ子お姉ちゃんのことばどおり、ケムリがあつまると白い肌のお手々になりました。
「あっ、ホントだ! よかったぁ・・・でも、何でそんな風になったの?」
元のってことは、今はちがうってことだと思う。
戻れないのかな? もしかして、ポテ子お姉ちゃんもおなかが空いてるのかもしれません。
「私は元々、千の姿を持ってる無形の邪神であり、宇宙人なんすよ。ただ、地球に溶け込む為に人間の血を取り入れたのでパワーダウンしてるんすよね。あっ、取り入れたのは私自身じゃないので、私は処女ですよ! だから安心して欲しいっす!」
「千っ!? すごいねっ、じゃあワンちゃんにもなれるのっ!?」
「スルーッ⁉ まぁ、もうちょっとエネルギーを貰えばなれますよ! ただ触手いっぱいの宇宙犬ですけど」
「それはイヤかも・・・」
何かニョロニョロ生えたワンちゃんは、ちょっとこわい気がします。
「さて、暴走も止まったところで流々ちゃんに大事なお話があります!」
「なあに?」
「今、上の階で討伐隊が動いて・・・怖ーいことが起きてるから、流々ちゃんにはここから動いてほしく無いんす」
「え、でもゴハンはどうしたら良いの?」
僕はいっぱい上に行かないとご飯がありません。
ちょっと上の方にも食べれるものはあるんだけど、苦かったり、すっぱかったりで、あまりおいしくないです。
「どうしても無理ですか?」
「一回、二回ならだいじょうぶ。でも、ずっとはムリかも・・・」
「なら、人が居そうなときは出来るだけ行かないようにしてください」
「わかった!」
「ん~~、流々ちゃんは良い子ですね!」
ポテ子お姉ちゃんはいっぱい頭を撫でてくれました、とても気持ちいいです。
でもやっぱりお姉ちゃんになでて欲しいな、お姉ちゃんにいつ会えるかな?
僕はお姉ちゃんに会えるのを、いっぱい考えながらポテ子お姉ちゃんに甘えました。
「あっ、ポテ子お姉ちゃん。からだダイジョウブ?」
「何がです? 黒いのは収まりましたよ?」
「ううん、ちがうの。僕ね、お口からドクが出るから、ポテ子お姉ちゃん平気かなって・・・」
「そっ、そういえば、指先がピリピリ痺れて・・・あぶっ⁉」
「ポテ子お姉ちゃぁぁぁぁんっっっっ⁉⁉⁉」
ポテ子お姉ちゃんは青い顔をして、倒れてしまいました。
◆
(流々っ、流々っ、流々っ、やっと見つけたっ!)
心配したっ、本当に心配したっ、でも場所が分かったならあとは私が迎えに行くだけ。
とりあえず行って抱き締めてあげたい、撫でてあげたい、それに渡したいものもある。そう思いダンジョンに潜る許可を貰おうとした所、私に下されたのは『待機命令』だった。
「何でよっ、どうしてっ⁉ 強いモンスターが居るんでしょ!! 調べたいことがあるんでしょっ!! 私が行けば良いじゃないっ⁉」
「何度も言わせないで下さい、護さんはここ兵庫支部の防衛の要なんですっ! そうホイホイ出すわけにいきません!」
いつも言われている事、同じ言い回し。
普段ならここ迄私がゴネる事なんてない。後々の事を考え、流々の事があったとしても歯を食いしばって我慢するだろう。
だが今回ばかりは通らない、何故なら今ここに居るからだ。自分の代わりとなる人物がここに。
ならば自分が離れても問題ない筈だ、協会の言い分など知った事ではない。
「蓮田ダイバーが居るじゃないっ、私より強い奴がっ! じゃあ私が離れたって問題ないでしょうっ!!」
「その蓮田様が、御厚意で調査に潜られています」
「何でアイツの方が優先なのよっ!! 私の方がずっと前から申請出してるじゃないっ!!」
そうだ、それこそ何週間も前から申請を出していた。
通常ならそもそも申請すら要らないのだ、それを協会が言ってきたからわざわざ出しているのにこの扱い。
「ランキング1位の方の好意を無下にも出来ませんので・・・」
「あのっ、クソ野郎っ!!」
(やっぱり大人は自分勝手だ。こちらの言っている事も、どれだけ必死なのかも全く考えてくれない。いつもそうだ、どうせ全部手遅れになった頃に『手は尽くしましたが』とか何とか言うに決まっているっ・・・)
「・・・・・・」
「・・・護さん?」
「・・・・・・辞めるわ。ダイバーなんて辞めてやる」
「ま、護さんっ⁉ ちょっと待って──」
「お前等なんて信用した私が馬鹿だったっ!! 大人は自分勝手だ、自分の得になるようにしか動かないし、それでどれだけ周りが悲しんだって表面上だけ謝ってハイ終わり。本当にクソだ、お前等っ、全員クソだっっっっっ!!!!!!! 護りたいものを護れなくなって、失って後悔した後に気付いたらいいっ、大人もっ、この国もっ、世界もっ、全部全部全部全部っ、全部っっっ──」
──くたばれっっっ!!!!!!
そう言い残して支部を去っていった少女。
彼女が去った後の支部は静まりまえり、誰一人として動こうとしない。
怒気に触れ、呼吸すらままならぬ者達も居る中、その全ての視線を集めるのは協会の出口扉があった場所。
彼女が怒りに任せ拳を叩きつけたそこからは、
仮にもモンスターからの襲撃に備えられている壁、それは戦車の砲撃にすら余裕で耐えられる構造となっていた筈だが・・・。
「これがランキング18位・・・『
兵庫支部最強の少女が今、《邪神の呼び声》に足を踏み入れた。
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