3本目:怒髪天を衝く
流々が自分の身に起きた変化に目を白黒させていた頃、
事の発端は、ある少女の父親にして血の繋がった他人、彼女が「人間の屑」と呼ぶ男からの電話だった。
◆
「あんの、糞親共がぁああぁぁぁぁっ!!!!!!」
「どうされたんですかっ、
私、
私には義理の弟がいる、目に入れても痛くないほど可愛い弟だ。
だが弟の母親とその恋人(自分の父親)があまりにも屑過ぎた。
日常的な暴力は当然、風呂やトイレは管理され、それどころか私と会うまであの子は、数日に一回しかご飯を貰っていなかったらしい。
あいつ等は、あの子を殺すつもりなのかっ!!
──このままじゃ、流々が危ないっ!
そう思った私は、あの
私は、自分言うのも何だが容姿だけは良い・・・と思う。
金を貯めるだけならば売春でも何でも手段は選ばなかっただろう。でも私は金と同時に権力を求めた、その理由は流々の今の立場にあった。
流々には戸籍が無かった。
あの母親、流々の出産証明を出さなかったのだ。
今のご時世で戸籍の無い人間が、証明を出さなかった人間がどうなるか知らなかったのだろうか?
いや、後で知ったんだろう。だから流々を外に出さなかったんだ。
日本は法律上ダンジョンを個人で所有できるから、防衛上、国の資産を守る都合上、日本の戸籍がない者に厳しい。
特に戸籍が無い者は数年から十数年の間、徹底した管理下に置かれる。
生活の全てが国の管理下、そんなの刑務所と同じだ。出た後だって、どんな目に晒されるか分かったものじゃない。
私が流々の生活を案じつつも外に出せなかった理由もそれである。
行く先に未来のない無戸籍者。もうどうしようも無いのかと思っていた時、それにいくつかの例外的措置があることを知った。その一つが特級権利を持つ者の「特別保護制度」だ。
簡単に言うと、トップランカーの探索者はその責任を持って法の外にいる人物を保護出来るらしい。
その制度を知った時「これしか無いっ!」と、そう思った。
その後、中卒で探索者の門を叩いた私は意外にも才能があったらしく、メキメキと実力を付け兵庫支部のエースとなった。
流々をもう少しで助け出せる、もう少しで・・・そう思っていた矢先だった。
「あんの糞共っ!! 私の可愛い弟を、流々を893に売りやがったっ!!」
少し前から危険な兆候はあった、だから金を大目に渡して流々に手出しさせないようにしていた。
「えっでも、護さん御姉弟はいらっしゃいませんでしたよね?」
「居るのよっ!! どうして誰も信じてくれないのっ⁉」
隣にいる職員の女性は私とそれなりに仲が良いが、そんな彼女でも流々の事を信じてくれない。
戸籍が無いとは、それ程までに有り得ない事なのだ。
「もうそんなことはどうでも良いわっ! クソ親父から連絡が来たってことは、流々は逃げたのねっ。偉いわ、流々!」
それよりも大切な流々の行方を追わなければいけない、いったいどこへ行ったのか?
「優しいあの子の事だ、きっと私に会いに来ようとする寸前で迷惑を掛けないようにと引き返す筈・・・」
「何でそんな見てきたような予想が立てられるんですか・・・」
「弟への愛ゆえにだが?」
「そ、そうですか・・・」
彼女が言っていたように、確かにあくまで想像。だが絶対間違いない。
──流々は近くまで来ていた。
姉の感がそう告げている。
「私の馬鹿っ、どうして流々が同じ地区に入った時点で気付かなかったのっっ!!!!!!」
「分かるわけないじゃないですかっ⁉ 護さんの言ってる事が変だって思っているの、私だけですかっ⁉」
「流々への愛があれば気付けるのよっ!!」
「ええぇぇぇ・・・・」
それから流々の移動先を考察していた私の元に、ある報告が入る。
「護さんっ! 大変だっ、子供がダンジョンに繋がっている川に落ちたっ!! ダンジョンに流されて行ったって!!」
「──まさか、流々」
私の思考は絶望に包まれた。
◆
姉が膝から崩れ落ちていた頃、件の流々は早くも体との問題に折り合いをつけ、近くで見つけた果物(猛毒)に舌鼓をうっていた。
「うん、ちょっとピリピリするけど美味しい♪」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ちょっと短すぎるので、近いうちに何か更新します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます