無明世界
威志の後ろ姿を見つける。酷くか細いその背中に、サナの不安は増した。
サナの気配に気づいたのか、威志が振り向き
「良かった。出たはいいものの、君がいないと世界を移動出来ないからね」
「あんたねえ」
サナは呆れたが、同時に安心もした。ちゃんと話せる。目も、あんな深淵のような空虚さはない。
威志は、どこか眩しそうに目を細めサナを見つめていた。
「君の世界、第四世界『宝玉世界』だっけ?」
「そうよ」
「僕の世界は、何て呼ばれてるの?」
「あんたの世界は、第九世界。名無しの『無名世界』よ。寄る辺となる力のない世界と言われているわ」
「なるほど。たしかに君たちみたいな力なんて、漫画か映画とかでしか見たことがない」
だけど、と威志は続ける。
「もし僕みたいなのが魔王だというなら、僕らの世界は」
威志は
「『無名世界』ではなく『無明世界』と呼ぶべきかもね」
死衣の瞳を連想させる、底のない穴のような昏い笑みで、威志はつぶやいた。
九柱の魔女に僕は殺される 青村司 @mytad
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