第12話
「な……」いきなり言われてクラトは言葉を失う。
「私はこの時代に来た時、もうこの世界は手遅れなんだと絶望していました。
でも、クラトさんが希望はあるのだと気づかせてもらいました。
あなたの住む世界を少しでも良くしたい、改めてそう決心できました」
「だったら、なんで俺と別れることになるんだ?」クラトは啞然としながら問いかけた。
「これから私のすることは危険なこともあるかもしませんし、この機体は、そもそも兵器です。だから、クラトさんを巻き込みたくありません」
「そうか、俺のことを考えてくれたからか」
「はい」
クラトは一息ついて言った。
「俺の意思を言うよ。君に協力させて欲しい」
「え?」リーエが硬直した。
「正直、俺は君が未来から来ようがどこから来ようがどうでもいい。俺にとって大事なのは、君が君だってことだけだ」
「クラトさん」リーエが感情を押し殺そうとするように口をつぐんだ。
「昨日、君は生きたいように生きられないのがやりきれないって言ってくれた。なら、はっきり言う。俺は君といたい。危険なこともあるだろうけど、それも俺の意思で受け入れるよ」
「でも……」リーエは迷っているようだった。
クラトが付け加える。
「それに、君のやりたいことは俺のやりたいことでもある」
「どういうことですか……?」
「正直に言うと、俺ははらわたが煮えくりかえってる」
クラトは両手の拳を強く握って、いまいましげに言った。
「俺はずっと人身道具として働いてきて、俺と同じような立場のみんなが死に物狂いで生きてるのを見てきた。それを、人をあんなゴミみたいに……。まだ、殺されそうになっている人も人知れず殺された人間もいるんだろ?」クラトの息が荒くなる。
「それは、おそらく……」
「あれを止めるって言うんなら俺は協力するよ」クラトはきっぱりと言い切った。
「クラトさん……」
「リーエは、本当はどうしたい?」
「それは……」リーエが口ごもる。
クラトが付け加える。
「君が本当に俺と別れたいって言うなら、それも受け入れる」
「まあ、俺は嫌だけどな」クラトは苦笑した。
「リーエ、君に言われたことをそのまま返すよ。俺は君が生きたいように生きられないのがやりきれない」
リーエは迷った様子で、返事がない。
「だいたい、俺にはもう君以外失うものがない」クラトが皮肉交じりに言った。
「そんなこと……」
リーエはしばらく俯いてから、静かに顔を上げて言った。
「私は、クラトさんと一緒にいたい」
「なら、それで、いいんじゃないか?」
リーエはクラトを静かに見つめた。
「金も仕事もないけど、何とかなるさ。君はもっとひどいところから来たんだろ」クラトがあっけらかんとして言った。
それを見てずっと張りつめていたリーエの顔が緩み、フフっと吹いた。
「ん?なんか変だったか?」クラトが軽く聞いた。
「ごめんなさい。クラトさんにしては楽観的だなって」
「君がそう言ってくれたんだけどな」
「それでは、あらためて」言葉通りリーエは姿勢を正し、手を重ねて深く頭を下げて改まった態度をした。
「これからもよろしくお願いします。クラトさん」
「ああ、こちらこそよろしくたの……」
言いながらクラトも頭を下げようとシートから上半身を起こそうとした。
「痛って~」
「ああ、クラトさん」
「とりあえず、今は、体を休めて下さい」
「うん、そうするよ」
「あ、簡易トイレとシャワーは後ろにあります」
「そんなのもあったのか」
だから、会った時リーエは汚くなかったのかと納得した。
「私は一旦、地上に戻って食べ物と着替えをとってきますね」
「ありがとう、頼むよ」
そして、リーエはクラトが襲われた郊外の近くにステラを地上から出して、コックピットから外に出ていった。
『終末兵装ライドステラ』金持ちと権力者のせいでメチャクチャになったディストピア社会で、底辺労働者は破滅した未来から来た美少女に愛されて巨大ロボットで世界を変える 砂擦要 @sunazuri
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