最終話
赤城は太平洋の波を切り裂きながら、ロサンゼルスに向かって進んでいた。山本五十六の目は鋭く、地平線の向こうに広がる敵の都市を見据えている。彼の心には冷徹な決意があり、戦局を見極める鋭い直感が働いていた。
「井上率いる大和、南雲の高雄もすでに現地に到着している。これで、我が艦隊の準備は万全だ」
山本は艦橋で戦況を把握しつつ、静かに言葉をつぶやいた。彼の中では、既に結論が見えていた。ロサンゼルスは、アメリカの航空産業の中心地であり、ここを攻撃すればアメリカは立ち上がる力を失う。
「航空機産業を叩き潰せば、アメリカの反撃の芽を完全に摘むことができる。これで勝負が決まる」
その時、空が唸りを上げ、零戦の編隊がロサンゼルス上空に飛来した。爆撃が開始され、炎が都市を飲み込んでいく。工場は次々と爆発し、煙が立ち昇る。地上ではパニックに陥った市民が逃げ惑い、軍事施設は無力化されていた。
「攻撃は成功だな……」山本は遠くを見つめながらつぶやく。「これで終わりだ」
その報告はすぐに大本営へと送られ、ルーズベルト大統領のもとへも届いた。アメリカ本土でこれほどの被害を受けたことは、これまで一度もなかった。西海岸は事実上の壊滅状態にあり、アメリカの防衛は脆弱になっていた。
ホワイトハウスの執務室で、ルーズベルトは苦渋の決断を下す。軍事顧問たちが次々と報告を持ち込む中、彼は深く息を吸い込むと、静かに降伏の意思を表明した。
「これ以上の戦闘は無意味だ……。我々は降伏する」
その声は静かで、しかし決定的だった。瞬く間にその報告が世界中に伝わり、戦争は幕を下ろした。ドイツ、イタリア、日本の三か国は連合して勝利を収め、世界は新たな秩序のもとへと移り変わった。
赤城の艦橋で、山本五十六は遠く水平線を見つめていた。彼の心の中には達成感と虚無感が入り混じりながらも、ただ一つの事実が刻まれていた。
「勝った……。これが最後の戦いだった」
目の前には静かな太平洋の海が広がっていた。戦火の終わりと共に、歴史は新たなページを刻み始めたのだった。
大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜 雨宮 徹@クロユリの花束を君に💐 @AmemiyaTooru1993
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。