【南雲忠一】ソロモン諸島での激戦②
南雲には光に照らし出された西本の空母が神々しく見えた。彼が率いる空母が一隻とはいえ、海上封鎖をしただけなので、航空部隊は無傷だ。
「西本部隊より、無線通信を受信! 『こちら西本。零戦で駆逐艦を援護して、制空権を互角に持ち込みます』とのことです!」
その報告を受けて、南雲の顔に再び力強さが戻る。西本は「高雄に追いつく」という任務を成し遂げたのだ。南雲はそれに応えなくてはならない。
「駆逐艦を高雄の砲撃で援護! 必ず守り抜け!」
南雲がそう命令する間にも、西本部隊から零戦が次々と発進しているのが見える。
「井上部隊に連絡! 『駆逐艦を守り抜けば、勝機あり』と」
「はっ、かしこまりました!」
部下が走っていく間に南雲は考えた。敵部隊は大和を爆撃して、短期決戦に持ち込もうとしていた。長期戦を避けるということは、アメリカ軍の戦力が少ないことを意味している。南雲は手元の懐中時計を見つめて時間の経過を待つ。しかし、一分、一秒が永遠のように長く感じる。
「駆逐艦が敵の本拠地にたどり着くまで残りわずかです!」「おい、砲撃で援護しろ!」
南雲部隊に活気が戻り、南雲が指示する前に動いている。そして、駆逐艦が敵本部に到着すると、兵たちが上陸していくのが遠目に見える。それから、数時間後だった。ソロモン諸島での激戦が大日本帝国の勝利という形で決着がついたのは。
「大本営に急ぎで連絡! マッカーサーを捕らえたと!」
南雲の前には、体のあちこちに傷があるマッカーサーの姿があった。
「貴様の命運もここまでだな。部下を見捨てて逃げ回った末に捕まるとは、アメリカの司令官も大したことないな。大本営が貴様を捕らえたことを発表すれば、アメリカ軍の士気が下がり、敗戦にまっしぐらだ」
「それはどうかな。私一人が捕まっただけで揺らぐほど、アメリカは弱くはない」マッカーサーは唇から血を流しながら、南雲の考えを否定する。
「大変です! アメリカ側が先に情報を発信しました。『マッカーサー司令官は抵抗した末に、名誉の戦死となった。アメリカ国民は、彼の死を無駄にしないよう、奮起すべし』と」部下が一枚の紙を差し出す。
「くそ、向こうに先手を打たれた!」南雲は手元の紙をくしゃくしゃに丸めると、マッカーサーめがけて投げる。
「言った通りだろう? お前たちは、あくまでもソロモン諸島を陥落させただけだ。アメリカ本土への攻撃が成功したのも、奇襲という卑怯な手を使ったからだ。まだ、我々にはミッドウェーが残っている。ハワイを落とせば、我々の勝ちだ!」
マッカーサーが勝ち誇ったように言う。
「ミッドウェーか……。確かに、ハワイが陥落すれば貴様の言う通りになるかもしれん。しかし、今度は我々が先手を打たせてもらったよ」
南雲は一枚の紙をマッカーサーに突き付ける。そこにはこう書かれていた。
「ソロモン諸島への攻撃と同時に、山本部隊は赤城を中心とした空母でミッドウェーを攻め落とすように」と。
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