宇宙軍編まで読了。軍事オタクになりたての頃を思い出しました。
戦争など、まっぴらである。
それでも考えてしまう。
真珠湾で反復攻撃をしていれば。
ミッドウェーで敵空母を先に発見できれば。
栗田艦隊がレイテ湾へ突入していれば。
富嶽や烈風が、あと少し早く間に合っていれば。
勝てたとは言わない。ただ、あれほど一方的にはならず、もう少し善戦できたのではないか。その未練にも似た疑問が、兵器の諸元を覚えさせ、作戦図へ目を向けさせ、やがて歴史そのものを組み替える妄想へ少年を連れていく。
本作は、その軍事オタクの原初衝動やどこかで見た記憶のあるクスっとくるエッセンスをためらうことなく巨大化させ、夢の兵器だけでは終わらない。
優秀な女性を操縦士へ登用し、制度を変え、教育を変え、産業を育てる。兵器の性能ではなく、それを量産し、運用し、次世代へ渡す国家の構造まで改変していく。
そして若き日の東宮陛下へ差し出されるのが、握手と『銀英〇』ぽい何か。
権力者を脅迫するでも、洗脳するでもない。好きな物語を渡して同好の士へ引き込む。オタクが仲間を増やすとき、頼るのは武力ではなく布教なのである。
そこへ、どこかのアニメヒロインを思わせる女性たち、天使と悪魔、十八万年級の記憶と技術設計、国家改革、兵器開発、世界大戦、果ては宇宙軍まで投入される。
普通なら離陸直後に空中分解する編成。ところが本作には、それを前へ運ぶ強烈な推進力がある。
「次は何を変える」
「その技術があれば、何が救える」
「歴史を変えた結果、次にどんな問題が生まれる」
改革と開発が連鎖し、主人公の知識が国家へ広がり、国家の変化が世界史を押し動かしていく。Webページをめくるたび、少年時代に頭の中だけで転がしていた歴史IFが、工場と学校と軍港を与えられて現実になっていく。
軍事オタクの夢とは、強い兵器を見ることだけではない。
あの敗北へ続く分岐点に立ち、今度こそ違う命令を出してみたい。救えなかった人を救い、間に合わなかった技術を間に合わせ、戦争へ向かう国家の舵を少しでも早く切りたい。
その願いを、宇宙へ届くまで燃焼させ、加速させ続ける。
歴史IFという形をとり、軍事、政治、技術、女性飛行士、悪魔性まで詰め込み、全部まとめて発進させ、強行着陸させる豪快な大長編である。
軍事オタクの豚にとって、これは物語というより、少年時代の妄想を再び見た光景となった。続編も期待したいです。