第5話


◇◇




『……わかった。じゃ、また明日!』




アメがそう言って理事長室を出たから、俺はこのうるさい奴と二人きりになった。




「おい千暁。さすがに強引すぎねーか?」




勇が鋭い目で俺を睨む。



本当は戸締まりの確認なんて必要ない。




「どうせアイツらの存在はすぐバレるんだし、出会いは早い方がいいだろ」




俺らの目的は、アメと屋上を溜まり場にする“彼ら”を会わせることだった。




勇は小さくため息をつき、「なぁ」と呟いて。




「……アメさんが“天色”を抜けた理由って何だろうな」




聞いても教えてもらえなかったんだろ?とすべてを見透かしたような目を向けてきた。




アメが俺らにも、この高校への転入を勧めた“正人さん”にも隠すようなこと────




と、なると。





「“アイツ”が絡んでるとしか考えられねぇな」





ガンッ!!




俺の言葉を聞いて、勇が近くにあったテーブルを拳で叩いた。



ガラス素材だったせいか少しヒビが入っている。





「ッくそ、なんでアメさんは俺らを頼らねぇんだよ……!」





勇が顔を歪め、悔しそうに叫んだ。



自分の不甲斐なさに苛立っているんだろう。




……確かに、アメは俺らを頼らない。



理由を聞けば、“これ以上みんなを巻き込めない”とか馬鹿なことを言うに決まってる。



そんなこと気にしないで欲しいのに。




だけど、あいつが俺らに救けを求めることは、きっともう無いだろうから。






「屋上にいる“アイツら”に賭けてみようぜ」






────もう誰でもいいから、あいつを救ってやってくれ。





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