第2話
「はぁ、はぁ……っ」
全力疾走でこの学校、『私立櫻木(サクラギ)高等学校』まで来た。
それに最上階の三階まで三段飛ばしで上がってきたもんだから「はぁ、」疲れた。
頭上には『理事長室』の文字。
時間は────よし、ギリギリセーフ。
ふぅ、と息を整え身だしなみを簡単にチェックする。
二回ノックしてからドアを開けた。
「失礼します。今日からこの学校に通う予定の……、っ」
両手に顎をのせ高級そうな椅子に座っているのは、おそらくこの学校の理事長。
綺麗な黒髪がさらり、揺れる。
その少し童顔で整った顔立ちをあたしはよく知っていた。
「あか、つき……?」
「アメ、久しぶりだな!」
ニカッと白い歯を見せて笑う。
「え、えええ!! 待って、なんでいんの!?」
彼は、
あたしは千暁の「暁」を取って「アカツキ」と呼んでいる。
「なんでって、俺がここの理事長だからに決まってんだろ?」
「いや初耳だよ」
大学を卒業してから一度も会ってなかったからなぁ。
まさか高校の理事長になってるとは思わなかったけど………なるほど。
父さんこの学校を選んだのは、理事長が暁だったからか。
それならそうと先に言ってくれたらよかったのに。
「てか暁がいるってことは───」
「あぁ、アイツもいるぞ。ちなみにお前の担任な」
「担任!? ……アイツちゃんと出来てんの?」
「まあ、結構真面目にやってるな。うるさいのは相変わらずだが」
「まじか。全然想像つかないや」
うるさいのは簡単に想像できるけど。
でも教師ってことは、ちゃんとスーツを着て生徒に勉強を教えたりしてるのか……
っ、やばい。アイツのスーツ姿って考えただけでも面白い!
どう頑張って想像しても教師には見えないアイツに、心の中で笑っていたら。
「なぁ、一つ訊いていいか?」
暁の表情が真剣なものに変わった。
正直、訊きたい事はわかっているが、あたしからは言わない。
…………言いたくない。
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