出会い
第6話
「ここか」
立ち入り禁止の看板が置かれた、屋上のドアの前に立つ。
暁の“戸締まりを確認したら帰っていい”という言葉につられて来たものの、なんだか不安になってきた。
屋上は理事長室の一つ上の階なんだから自分で行けばいいのに、なんであんな必死に頼んできたんだろ。
それに、立ち入り禁止にしてる場所の戸締まりの確認って必要なくない?
暁の本当の目的は何なのか……ま、確認したらわかるかもな。
そう思ってドアノブをひねり勢いよく押してみると、スッと普通にドアが開いた。
──ゴンッ!
「い”っ」
あれ、鍵がかかっていない……?
「っおいテメェ! 何しやがんだよ!!」
ガシッと誰かに胸ぐらを掴まれた。
身長差のせいか一瞬だけ体が浮く。
見上げると、自分の頭を片手でさすっている男と目が合った。
少し黄みがかった赤髪に、切れ長の黒い瞳。
癖のない真っ直ぐな彼の髪がサラサラと風に揺れている。
中性的で綺麗なその顔立ちは、荒々しい口調とまったく合っていなかった。
髪色は派手だけど、女装したらものすごい美人になりそうだなぁ……
「──おい! 聞いてんのか!」
「ん?」
「ん?じゃねェよ! 頭どーしてくれんだよ!」
赤髪が自分の頭をバシバシ叩く。
叩いているところに目を凝らせば、微かに膨らんでいるのが見えた。
「あ、たんこぶだ。……それがどうしたの?」
自分のたんこぶを他人に見せたい変な趣味でもあんのか。
「はァ? テメェがやったんだろ!!」
鋭い目つきで睨まれ、怒声が飛んでくる。
……って、あたし?
いや別に殴ったりなんかしてな…………あ。
そういえば、ドアを開けた時にゴンッと鈍い音が聞こえたような────
「ごめんなさい!!」
あたしのせいでドアに頭をぶつけたのか。
……とりあえず謝ろう。転校初日から問題は起こしたくない。
「ああ”? そんなんで許すわけ……」
「お〜い。一般人に手ぇ出しちゃ駄目だろー?」
赤髪の横から、ひょっこり背の高い男が現れた。
ムラなく染まった藍色の髪。襟足は耳の下まで伸びている。
ダークブラウンのややタレ気味の瞳と涙ぼくろが、彼の甘い顔によく合っていた。
「わりーな。……でも、ここがどこだか分かってんのか〜?」
ゆるい口調でヘラヘラと笑う。
だけど、目の奥がまったく笑っていない。
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