第14話
「もうすぐホームルーム始まんぞー」
まだ廊下にいる生徒たちを追い立てながら歩くコウの後ろをついて行く。
『2−A』と書かれた教室プレートのドアの前で、彼は立ち止まった。
教室の外からでもガヤガヤと中の騒がしい声が聞こえてくる。
「俺が先に入るので、呼んだら入ってきて下さい」
「了解ー」
予鈴が鳴ったと同時に、コウが教室に入った。
静かにしろと生徒たちに注意している声が聞こえ────
「今日は転校生を紹介する。アメさん、入ってきて下さい」
呼ばれた。よし、行くか。
──ガラララ。
スライド式のドアを開けて、教卓の後ろに立つコウの近くまで歩いていく。
「雨貝 八永です。よろしくお願いします」
そんな簡単な自己紹介をして、下げていた頭を上げた瞬間。
「……うっわ、超美人じゃん!」
「チッ、女かよ……」
「てか黒髪って珍しくね!?」
「イケメン来いよ! イケメン!!」
クラスの奴らが一斉に騒ぎだした。
……イケメンイケメンって、女で悪かったな。
そう心の中で苦笑した時、ふと屋上にいた美形集団の姿が頭に浮かんだ。
「(なんというか、個性豊かな連中だったなぁ)」
昨日のことを思い出しながら教室を見回す、と。
あたしはある二つのことに気がついた。
まず、女子生徒の人数が圧倒的に少ない!
クラスの男女比は7:3くらい。そして彼女たちはみんなメイクが……すごい。やばい。ケバい。
とまあ、あたしの語彙力が恐ろしく低下するほど派手だった。
次に、A組の生徒は全員が髪を染めている!
一番落ち着いた色は焦げ茶かな? 黒髪の人は一人もいない。
あたしも黒一色ではないけれど、自己紹介の時に“黒髪って珍しくね!?”と叫んだ奴がいたくらいだ。かなりレアなんだろう。
前に父さんから聞いた『かなり校則が緩くて自由な高校』というのは間違いではなかった。
ただいくら自由とはいえ、制服と上履きは必ず学校指定のものを着用しなければならないらしい。
「お前ら! いい加減静かにしろ!!」
ギャーギャーうるさかった生徒たちは、コウの怒鳴り声ですぐに静かになった。……やっぱり恐れられてるんだ。
「アメさんの席はあそこです」
静かな中、コウが指したのは窓側の一番後ろの席。
一番いい席じゃん!と思ってコウを見ると、他の生徒達には見えないよう教卓の裏で親指を立てていた。
こいつ、最高だ……!
あたしもこっそり背中の後ろで自分の親指を立て返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます