第15話
「じゃ、今日の1限は自習だから真面目にやれよ」
1限目の現代文の先生がお休みらしい。
そのことを伝えたコウが教室から出た途端、またガヤガヤと教室内が賑やかになった。
あたしは痛いくらいの視線を浴びながらも、気にせず自分の席に直行する。
椅子に腰掛けると。
「よろしくな」「よろしくね!」「よろしくっス!」
前と、斜め右前と、隣の席の“信号機”に話しかけられた。
……いや、信号機というのは比喩表現で彼らはれっきとした人間。
信号機と言ったのは、なんと話しかけてきた三人の髪色が赤、黄、青緑だったから。
「……よろしく」
とりあえず返事をすれば、ぱぁと彼らの表情が一気に明るくなった。
信号機だけどかわいいな。
「俺は
「僕は
「俺は
あたしが名前を尋ねる前に、赤、黄色、青信号がそれぞれ名乗ってくれた。
なんか青信号の名前も気になるけど……今はそれよりも聞きたいことがある。
「ねぇ、なんでその髪色にしたの?」
これだ。本当に何なんだその信号機カラーの髪は!
まさかみんなで話し合って揃えたとか……?
気になりすぎたので聞いてみたら、三人ともカッ!と思いきり目を見開いた。……うん、ちょっと怖いかな。
そして三人揃って「「「聞いてください(っス)!」」」となぜか敬語で迫ってきた。
「な、なに?」
みんなの勢いに押されて吃ってしまう。
「ここからは僕に説明させてください!」と興奮した黄色信号が手を挙げた。
その周りでは赤、青信号が“俺も俺も!”と子供のようにアピールしている。
え、なにこれ。あたしが選べってこと?
「えぇーと。じゃあ、黄色信号で!」
「黄色信号?」
彼が不思議そうに首を傾げる。
「あ、ごめん。みんな信号機に似てるからつい……」
そう彼らの髪色を指して正直に答えると、三人は肩を落としてわかりやすく落ち込んでしまった。
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