第8話
「──で、ここが俺らの“溜まり場”だって知ってて入ってきたのか〜?」
「溜まり場? ……知らなかったけど」
この学校に来たのは今日が初めてなんだから。
そっちから質問してきたくせに、藍髪が「ふ〜ん」とあたしの言葉をどうでも良いことのように流してくる。
そして。
「ほんとにかー?」
何かを探るような瞳で、あたしをじっと見つめた。
……不快だ。
取り繕った笑みも。
言ったことを信じない態度も。
何かに怯えているような、その瞳も。
……まぁ特に気にしないでおこう。ここの生徒たちに深入りするつもりはない。
「本当だよ。だってあたし今日が初登校の転校生だし」
「「「転校生!?」」」
三人の声がぴったりハモる。
「そ、そんな驚くこと?」
「なんつーか、こんな微妙な時期に転校してくる奴もいるんだな〜って」
……それはあたしも思ったよ。けど断れない父さんの命令なんだから仕方ないじゃん!
なんて愚痴を今日会ったばかりの人達に言えるはずもなく、「まあねー」と適当に返しておいた。
「転校生なのはわかったけど、なんで屋上に来たの? ホームルームもう始まってるよ?」
「教室に向かおうとしたけど、その前に理事長から“屋上の戸締まりを確認してほしい”って頼まれたんだよね」
「……でも俺らが屋上を溜まり場にしてんのは、理事長も知ってることだけどな〜?」
藍髪の警戒心がさらに強まった。
溜まり場の存在を知る理事長が、誰かに屋上の戸締まりの確認なんか頼むはずないと言いたいのだろう。
だけど実際に頼まれてるんだ。
あたしはずっと握っていた銀色の鍵を、屋上のドアの鍵穴に差し込んでみせた。
「ほら、これが証拠。理事長から預かった屋上の鍵」
「本当だ、ここの鍵は理事長しか持っていないし……」
疑ってごめんね、と深緑髪に謝られた。……彼も疑っていたのか。
でも確かに、いきなり知らない奴が自分達の溜まり場に来たら警戒するのも無理はない。
逆の立場ならあたしだって似た反応をしたと思う。
……それよりも暁。理事長だけが持っているような貴重な物をあたしに預けるなよ!
いい加減な理事長に呆れながら、あたしは彼が必要のない確認を頼んできた“本当の目的”について考えた。
ここに何かあるのか。
それともこいつらに会わせるためか。
だとしても、何が目的で───…
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