第3話 おっぱいはどうやって?
シロが仕事に出かけ、俺は皿を洗う。
舞は風呂に入り、明日のために制服や下着を洗濯している。
つまりは現在、ノーパン&ノーブラというわけだ。
シロのTシャツ一枚で、シャンプーの匂いを振りまきながら、無防備に俺の周囲をうろうろしている。
一応、1回抜いた後とは言え、それはそれは刺激が強い。
舞はそんな事はお構いなし。
俺の事を、まだ皮も剥けてないガキの頃のまんまだと思っている節がある。
「き、着替えとかさぁ、ある程度、持って来て置いといたらいいじゃん」
最後の皿を、水切りカゴに入れながらそう言うと「うーん」と、唸る。
「そうなったらさぁ、なんか同棲みたいじゃん」
「いいじゃん。ダメなの?」
「うーん、まだ高校生だし、そういうのはさぁ、結婚するまで取っておきたいタイプなんだよね」
「結婚……。もう、結婚なんて考えてるの?」
「ダメかな? 重いかな?」
「はは、どうだろ? まぁ、経済的には問題ないかもしれないけど」
結婚の一番のハードルは年齢より、男の稼ぎだと聞く。
その点では、シロは合格と言っていいのかも知れない。
正確な年収はわからないけれど、稼ぎは俺よりある。
今現在の生活費は、俺の家計簿によると二人の小遣い抜きで20万ちょいぐらい。
「経済的か……。クロはどう思う? シロはいい旦那さんになると思う?」
かなり難しい質問だ。
いい旦那さん。つまりは、いい父親という事だろうか。
俺にそのサンプルはないから、答えに詰まってしまう。
「まぁ、なるんじゃない?」
適当に答える。
「クロは、いい旦那さんになりそうだよね」
「え? そう? なんで?」
「なんとなく」
「なんとなくって……」
舞だって、いい旦那さんについてのサンプルはないだろう。
「女のカンってやつよ。取り合えず、浮気はしなさそう」
「まぁ、それは間違いないよ。俺は一途だからなっ」
「さて! 始めよっか!」
「え? 何を」
「実習のレポートだよ! 私はもう終わってるんだからね!」
「あ、そうだった」
俺は部屋に戻って、カバンから赤ちゃん人形を取り出す。
ずっしりと、実物大の重さを伴ったリアルなそれを、なんだか申し訳ない気持ちで胸に抱いた。
本物の赤ちゃんを、こんな所に閉じ込めたら大変な事だな。
雑な扱いを反省しつつ、よしよしと頭を撫でた。
「ふふふ、何してるの?」
その姿を、舞に見られていたらしい。焦る。
「い、いや、なんでもない」
「はいバスタオル」
「サンキュ」
赤ちゃんの下に敷くバスタオル。
それを受け取って、ベッドの上に敷いた。
その上に、ポンと置く。
「ちょっと、もっと丁寧に置いてあげなよ!」
「あ、そっか。ごめん」
慌てて人形を抱き上げ、よしよしする俺。
「ああ、そうじゃない。抱き方は、こうよ」
俺から赤ちゃんを奪って、横向きに抱きかかえる。
トントンと背中を優しく叩きながら、まるで本物の赤ちゃんをなだめるみたいに、体ごと左右に揺らす。
あかちゃんの口元が、ちょうど舞の乳首の位置で、まるでおっぱいをあげる姿勢のようだった。
「今にもおっぱい飲みそうなぐらいリアルだな。その人形」
そう言うと、舞は「ふふ」と笑う。
「はーい、おっぱいの時間ね、よしよし」
そんな子芝居をしながら、赤ちゃんの顔をおっぱいに押し付ける。
「おっぱいってどうやって飲ませるの?」
欲望に抗えない俺は、ついそんな事を口走ってしまった。
「赤ちゃんは、口元に乳首を近づければ、自分でちゅっちゅって吸い付くんだよ。本能だからね」
舞は、ふふふと笑って俺を見上げた。
「そういうとこ!」
「は? 何が?」
「そういう所が、いいパパになりそうだなって思う」
「へぇ」
「シロは赤ちゃんとか無関心だからさ」
「そ、そうなの? で、どうやって近づけるの?」
「へ?」
「え? いや、おっぱい……どうやって飲ませるのかなって」
「興味津々だね」
「う、うん。すっごく興味ある」
今、この瞬間、赤ちゃんになりたいとさえ思う。
舞は、斜め上を見上げて少し考える素振りを見せると、おもむろにTシャツの裾をまくり始めた。
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