第2話 舞の事なら何でも知ってる

 別に、舞じゃなくたって女なら掃いて捨てる程言い寄って来る。

 その中には、やれるだけの都合のいい女だっているだろう。

 つい一週間前も、告白されたばかりだ。

 しかし、体が反応しないのだ。何度かそういう場面になった事もあるが、いつも土壇場で気持ちが萎えてしまう。セックスどころか、キスさえ未経験。

 気持ちが伴わないセックスに、俺は何の価値も見い出せないでいる。

 それなら、無料のエロ動画で十分だった。


「美味しい?」

 舞が俺の顔を覗き込んだ。


「あ。まだ食ってない」

 スプーンの上に乗せたままで、すっかり冷えた一口を頬張った。

 甘じょっぱい卵がとろりととろけて、酸味のあるケチャップと絶妙に混ざり合う。

「うまっ!」

「うふふ、よかった」

 舞は茶色がかった瞳を半分に細めて、茶目っ気たっぷりの笑顔を見せた。


「俺、今日仕事あるけど。舞、どうする? 帰るなら送って行くけど」

 半分ほどオムライスを平らげていたシロが訊いた。

「うーん、どうしようかな」

 小動物みたいに小首を傾げて、シロを見つめる。

 シロは舞の気持ちを知ってか知らずか、親指と中指で、ふにゅんとした舞の頬を両側からつまんだ。それに伴って、唇がむにゅっと前に突き出る。


「泊まる? 俺、帰り朝になるけど」

 突き出た唇のまま「どうしようかな」と縋るような視線をシロに向ける舞。

 どうしようかなと、舞が言う時は、帰りたくないの合図なのだ。


 子供の頃からそうだった。

 どこへ行っても、何をしても、「もう帰る?」という問いに、舞がすんなりに首肯する事はなく、口癖のように「どうしようかな」と言う。

 言い換えれば、もっと遊びたい、或いはもっと一緒にいたい、または、帰りたくない。と言う意味なのだと俺は思っている。

 舞は、本心をなかなか口に出せない性格なのだ。


「泊まればいいだろ。家庭科の課題、一緒にやろうよ」

 俺は察しのいい男だ。

 舞がしたい事をして、言って欲しい事を言ってやる。


「家庭科の課題? ああ! 保育のやつ!」

「うん。赤ちゃんのオムツ交換」

「まだやってなかったの?」

「けっこう面倒だろ、あれ。手伝ってよ」

「ふふ。OK! いいよ」

 舞は得意げにそう言って、オムライスを頬張った。


「なんだよ。赤ちゃんのオムツって」

 シロが不思議顔で会話に割り込んだ。

「ああ、学校の課題だよ。保育実習のレポート、明日までに提出しなくちゃいけなくて」

「へぇ、そんな授業あるんだ?」

「シロは進学校だったから、そういうのなかったんだな」


 俺と舞が通う高校は、公立の農業高校で、普通科よりも専門学科の方が充実している。農業科の他に生活デザイン科や調理科などを備える特色ある高校だ。

 それ故、特に家庭科については、踏み込んだ授業があるのが特徴的で、保育や料理、被服についても、男子だって女子と同じように学ぶ事を強制される。

 

 俺と舞が通うのは生活デザイン科。男女比は女子が断然多くて、およそ1:5。

 どこぞのエロ漫画並みの貞操逆転世界である。

「なんだよ。俺だけのけ者みたいだな」

 シロは大人っぽく、余裕の笑顔を見せる。


「あ! クロ。ケチャップ付いてる」

 舞はこちらに手を伸ばして、人差し指で俺の口元をなでた。指先に移しとったケチャップをペロリと舐めとる。

「ふふ」

 まるでお姉さんみたいにほほ笑む舞。

「お前たち、本当仲いいよな」

 シロが、他人事みたいな言い方をする。

「妬いてる?」

 舞が訊くと、シロは平然とこう返した。

「なわけねーだろ」

 舞は不満げに、ケチャップで赤くなった唇をぷくっと尖らせる。


 強がりでもなんでもない。

 シロは本当に、ヤキモチなんて妬いてないのだ。

 つまり、俺と舞がそういう事になるなんて、これっぽちも警戒していない。


「お前たち、小学校3年ぐらいまで一緒に風呂入ってたよな」

 シロがまた、俺たちを茶化す。


 俺たちは保育園から一緒。お互いの母親はいわゆるママ友同士で、お互いの家を行ったり来たりしては、夜遅くまでどちらかの家で遊んでいた。

 そこにはいつも、決まって母親二人の男友達がいて、部屋には酒とたばこの匂いが充満している。

 そんな不適切な環境も、3人なら気にならなかった。

 いつからか、母親同士は疎遠になっていたが、俺たちは3人はずっと仲良し。

 幼い頃から常に一緒に過ごし、そのまま思春期を迎えたというわけ。


「クロ、こんぐらいだったよね」

 舞が、人差し指と親指でUの字を作って、その間から覗くような仕草をした。

「は? 何が?」

「おちん……」

「バカいえ。もっと大きかっただろ」

「小さかったよー。今は大きくなった?」

「うるせー。お前だってぺったんこだっただろ」

 すっかり空っぽになった皿を持って、俺は立ち上がった。

「ご馳走様」

「今は、Gカップだよ」

 背後から聞こえた声に、かぁーーっと体が火照って、耳まで熱を持つ。

 

 揉みしだくたびに、掌からこぼれて。

 突き上げるたびたわわに揺れる乳房を想像して、また下半身が熱くなる。

 薄桃色の小さい突起は、指先で転がすたびに、敏感に反応して、硬く尖るのだろうか。

 幼い顔立ちの舞が、身をぎゅっと縮めて刺激に耐える姿を想像して、俺はまた下半身を熱くするのであった。



・・・・・・・・・・・


ここまでお読み頂きありがとうございます。

かなりソフトにはしているんですが、もしかしたら警告が入るかもしれません。

これ以上修正しようがないので、もし警告がきたら、エピソードごと非公開にしないといけなくなって、わけわかんない感じになると思います。ご了承ください。

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兄と結婚した幼馴染を寝取るまで(カクヨム版) 神楽耶 夏輝 @mashironatsume

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