第3話

皆さんは背筋の凍るような、ぞわぞわと鳥肌がたつような、心臓がヒュッと音を立てて冷たくなるような恐怖体験をしたことがあるだろうか。


人生に一度はあるのではないだろうか。

そして、それはもしかしたらホラー映画だったかもしれない。どこかの遊園地のお化け屋敷だったかもしれない。怪我をしたときかもしれないし、現実ですらなく夢の中なんてこともあるかもしれない。

時代をさかのぼって考えたなら、「戦国武将があと一手のところで敗北する瞬間」だったりするのかもしれない。


話が長い?回りくどい?ああ、そうだとも。言いたいことは充分にわかるさ。


吾輩にとっての恐怖体験とは。

今夏に起こった、今ここまでくどくどと語っていたことにほかならない。

これはまさに「敵に寝首をかかれた」ようなできごとだったのだ。

勝利おわりを確信したときほど、無防備はことはないなんていったい誰の教えなのやら。なんて、適当に聞き流していた頃が懐かしく思えるほどに。

予想もしていなかったところからの…巨大な隕石による奇襲かのごとく。


吾輩はなすすべなく「デジタル社会」に敗北したのである。

西暦2024年。この忌まわしき8月31日23:59のことはきっと生涯忘れないであろう。

どうあがくこともできず、将来の相棒にもなれそうなほど優秀な彼ら《AI》すら、あっけなく敗北した歴史的な瞬間。全吾輩が号泣した、床に崩れ落ちたあの瞬間。


諸悪の根源はこちらをみてニヤリと、こちらを見たのだ。

あの黒々とした一つ目をもつ、折りたたまれた銀色の怪物は。


きっとこれからの、未来の学生こどもたちはこれを相手にして、

尚、終末課題悪魔と戦わねばならないのだ。


ああなんて大変な時代に生まれてしまったんだ。

執行猶予すら許されない状態で、それでも、我々は成し遂げなくてはならないのだ。



これは長い文章が綴る、なんともあっけない瞬間の物語だ。

とある高校の三年生が死力を尽くしてひと夏の戦い《絶望》に挑み、

夏休みの課題やつらとの苛烈極まる争いから見事敗北ゲームオーバーし、離脱卒業するという人類の吾輩の希望を叶えることができたという

今となっては「もと」、終末戦士学生による回想録かつ物語過去である。



最後に一つ、いや二つほどいわせていただきたい。



紙なら、紙なら間に合ったということを。

今年、2024年9月1日は日曜日。つまり始業式は2日だったのだ。

情状酌量の余地も、あったかもしれないのだ。紙ならば。

世の中のペーパーレス化は、いささか急すぎたのではないだろうか。環境に、自然に優しいのは大変素晴らしいことだ。それに違いはないが、やはり、学生戦士にもその優しさを向けていただきたいということを。


そして、吾輩が受験生にもかかわらず執筆血迷っているのは、決して三つ目の課題を退けられなかった罪を「コンテスト」に小説を出品し、意欲溢れる姿勢を見せることで、あわよくば少しでもよい成績を頂戴して…罪を帳消しにしようと目論んでいるわけではないのだ。そのような小賢しい真似は、していないような、いなくないような、なんてね。


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8月31日の夜明け 月渚 @lunacreciente1109

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