第2話
皆様、「夏休みの課題」という名の、先生からの素敵な贈り物をいただいたことはあるだろうか。多くの人は素敵な、「学校で会えるサンタさん」により配られてきたはずなのだ。そう、それがたとえ受け取り拒否したとしても、だ。
あれに比べたら、
まったく、同じ紙きれのくせしてこれほど違うなんて、信じがたい話だ。
残念ながら、非常に残念ながら
たとえ軽くても、安心して油断するにはまだ早い。
たとえ薄いプリント数枚であっても、とんでもなく
このような物騒、かつ卑怯な「
「大人ってのは汚い手を使うものなんだよ」といったのは誰だったか。
今になって実感している。まったくもってその通りだ。悪気のない子供ほど質の悪いものがないなんていうように、これほど質の悪いものはない。
その笑顔に騙されてはならないのだ。
いつもは、よく気にかけてくれているような先生でも、だ。信じてはならぬ。
吾輩は忘れていない。
「高校3年生は、受験で忙しいからね。
あの言葉を。終業式で聞いた、「なんて慈悲深いのか」と感動したあの言葉を。
忘れていないのだ。
歴史は、過ちは繰り返されるらしい。
だから吾輩はここにしっかりと書き記しておこう。
「油断するにはまだ早い。」と
一つ目が終わった。世界史のプリントであった。
これは確かに「慈悲」のかけらを感じとれた、かもしれない。
二つ目が終わった。今度は古典の問題であった。ここには「受験にも活きる実用性」という確かな慈悲と生徒の将来を思う心があった。
あったのだ。確かにあったのだ。三つ目までは。
三つ目はパンドラの箱だったのだ。期限直前から開けてはならない、禁断の箱だったのだ。
そう、あのゆかいな家族が出演する国民的アニメの、野球少年だって。
孫に甘いおじいちゃんがいる少女だって。
課題は「紙媒体」であったのだ。
時間にシビアではない、「紙」で提出なのだ。
ぶっちゃけてしまえば「新学期の始業式が終わるまで」は執行猶予があったのだ。
だからこそ失念していた。そう、今は、現代は
情報のデジタル化が進み、世界の
そうなのだ。「課題」の締め切りは、時間ピッタリ。
数秒の誤差さえもない、8月31日23:59であるということを。
その時点で提出できていなかった
「解いたのですが、自宅に忘れてしまいまして…」は通用しない時代になったのだ。
なってしまったのだ。
今日この日ほど、デジタル社会を恨めしく思ったことはない。
吾輩は今までは、いい時代に生まれて本当によかった。と、そう思っていたのだ。
デジタル社会がなんだかんだと気に入っていたのだ。
しかし、今となってはこのありさまだ。
世界は残酷だ。君もそう思わないか。
未来の子供たちのためにも、時間に縛られすぎていると声を上げたいところだ。
しかし、非は間違いなく吾輩にある。
こんなとき、AIが助けてくれるのならどれほどよかったことだろう。
これを活用すれば、あのような「取り返しのつかない過ち」は起こらなかったのか。
いいや。
あのパンドラの箱には、
そう。その禁じ手こそが、「授業動画の視聴」だったのだ。
どうやらご丁寧に「視聴時間も表示」されるらしい。
…倍速で視聴しよう作戦は始めるよりも前から破綻してしまった。
トドメの「視聴後にチェックテスト」というおまけつき。
言わずもがな、チェックテストはオンラインだ。吾輩の正答率も、回答も、入力した時刻すらも筒抜けなのである。こうなってはなすすべもない。受け入れなくてはならないのだ。
そして、ただ夜明けを待つだけだった。
そうだな、今こそあの
ああ
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