一章 学園編

第10話 成長と旅立ちの前日

クオンに引き取られ8年がたち、セツナは立派に成長していた、当初はクオンの膝元ぐらいの大きさだったのが今では背を抜かす程になっていた

そして現在、仙石城の稽古場で修行中である


「てい!」

「うわっ!!」

「それまで!勝者、セツナ!」


一連の戦いを見ていたギャラリーは盛り上がっていた


「すげえな、これで49人抜きか」

「ああ、しかも休まずにだ」

「すっかり強くなってしまいましたね」


どこまで行くんだと、周りがざわつき始めるとヒスイが本気の表情でセツナの目の前に立つ


「セツナ様、次は私が相手です」

「ねえヒスイ、来るなら本気出してよ、私も本気で行くから」

「...わかりました、では!」


すると、ヒスイの弓矢に炎が付与される


「フフン、そうこなくちゃね!」


不敵に笑うと、セツナの刀に風が纏う


「セツナ様、怪我しても恨まないで下さいね」

「当たらないから怪我なんかしないよ」


ヒスイは容赦なく顔を狙い撃ちをするが、セツナは刀で弾くと刀を正面にぶん投げる、ヒスイは予測していなかったがかろうじて弓で防ぎ、この一瞬の油断をセツナは逃さなかった

もう一本隠し持っていた刀を突きつけると、ヒスイぺたんと床に膝をつけると「そこまで!」、と止められ場は騒然とした


「すっげえ...あのヒスイにも勝っちまったぜ」

「てかあんな戦い方ありかよ...」


周りがざわついている中、セツナはヒスイに手を出した


「強く...なりましたね」

「成長期だからね」


冗談混じりにそんな事を言いながら、手を掴んだヒスイを立たせると、「セツちゃん」と呼びながら近づいてくる、セツナをそう呼ぶのは1人だけだ


「お疲れ様、はいお水とタオル」

「ありがと」

「まだやるの?」

「いやもう戻るよ、明日早いし」


2人は稽古場のみんなに挨拶をしてその場を後にするとセツナは城の外までミコトを送る


「いよいよだね」

「ルメリクス魔法学園か...楽しみだよ、今日寝れるかな」

「私もセツちゃんと一緒に行けると思わなかったよ」

「あの学園長に感謝しなきゃだね」

 

しばらく2人は会話を楽しむとまた明日と別れの挨拶をしてセツナは城に入り自室へと戻ると狐がセツナ目掛けて飛び込んできた


「ただいま、コハク」

「おそかったではないか、なんじゃ浮気か?」

「違うって、修行してたの...てか浮気ってなに?」


無理やり剥がして着替え終わり、一息つく


「して、セツナよ、明日の準備は出来ておるのか?」

「一応ね、荷物はもう既にあっちに送ってるし、他は...うん、大丈夫かな」

「なら心配はいらぬな」


コハクはボフンと音を立てると小さい女の子の、姿になりセツナの膝下に乗りあらかじめ準備していた本を読みはじめた


「ねえ、尻尾が私の顔を覆って何も見えないんだけど」

「硬いことを言うでない」


この行為はセツナがコハクを式神にしてからずっとやっている、何故こんな事をするのか聞いた事があったがコハク曰く「親睦を深めるため」と言われ、まあそれならと6年間ずっとこの行為が続いている、コハクは満足しているのか鼻歌を歌うぐらいに上機嫌だ


「〜♪」

「私の膝そんなに座り心地いいのかな?」


頭を撫でながらそんな事を考えていると食事の時間がやってくると、コハクは狐の状態に戻るとセツナの頭に乗っかる


「さあ、進むのじゃ〜♪いなり寿司がワシを待っておるぞ!」

「お願いだから自分で歩いてよ...」


もうすっかり日常と化した、やり取りをしながらクオンがいる部屋まで向かい、扉を開ける


「あれ、今日みんないるんだ...珍しいね?」

「今日でセツナちゃんと過ごすの最後ですから、みんなあなたと1秒でも多くいたいんです

よ」

「いや、別に今生の別れじゃないんだからさ...」

「よいではないか、こんなにご飯が沢山あるんじゃぞ!食べねばなんとやらと言うではないか、ここは大人しく食べるのが礼儀というものじゃ」


頭から降りて人の姿になり食べようとするとクオンから扇子でパンッと止められた


「セツナちゃん、さあ座って食べましょう?」

「まあいっか...いただきます!」


ワイワイと、盛り上がりながら夜もあっという間に更けて行き、セツナは明日早いためひと足先に部屋を出て風呂に入って、布団に入ろうとするとクオンが部屋を訪ねてきた


「まだ起きてる?」

「どうしたの?」


キョロキョロと周りを確認すると部屋に入ってきて、包装された物を渡す


「入学祝い、これを渡したくて」

「あ、ありがとう...開けていい?」


「どうぞ」と、言われ丁寧開けていくと中に入っていたのは和と洋が混ざった白いコートだった


「えっ!これ、本当に貰っていいの?」

「ええ、着てみて、今のセツナちゃんに合わせて作ったから似合うと思う」


セツナは言われるがまま袖を通した、成長した今のセツナには丁度いい長さだった


「うわ〜、カッコいい!ありがとう母上!」


勢いよく抱きしめるとクオンはしみじみとセツナの成長を感じていた


「本当に大きくなったね、気づいたら背が私より大きくなっちゃって」

「ここで待ってて、きっと今よりも成長して帰ってくるから」

「ええ、約束ですよ」


小指を絡ませて、2人は笑い合った...その日は綺麗な満月だった


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