第6話 ミコト・ジングウジ
イチジョウの息子を殴って逃げるように去って、気づいたらセツナは城下町にまで来ていた
「はあ、はあ...殴っちゃった...どうしよう、怒られるかな...はあ〜、まあなるようになる...かな?」
セツナは気持ちを切り替えて城下町で食べ歩きをする事にした
「おや、セツナ様じゃないか」
「...お団子貰っていい?」
はいよ、とお団子を受け取ると川辺の岩場に声を掛けて食べるがその表情はどうにも沈んでいた
「んぐっ...美味しいけど...うーん、どうしよう」
それはそれとして団子は美味しい、食べているとどこからか視線を感じ、視線を感じる方を見ると、背はセツナと同じぐらいで巫女服を着ている子がじーっと見ていた
「...えっと、食べる?」
「いいんですか!?...いやでも流石にクオン様の子から頂くのは...」
ぶつぶつと1人で何か呟きだした
「あーあ、もう私食べれないなー、しかたないからー、捨てるしかぁ、ないなぁ」
と、なんともわざとらしく言うとその子が「勿体無いので私が頂きます!」と言うと団子を奪い取って食べ、食べ終わるとその子の顔はサァーと血の気が引きセツナに向かって、土下座をし始めた
「なんて、失礼な事をしたんでしょう!このミコト・ジングウジ、腹を切ります!」
「ちょっと待って!?やめてよ!落ち着いて!」
・・・・・・・・・・・・・・・
「どう、落ち着いた?」
「ほんとにごめんなさい」
なんとか落ち着いてセツナは話を聞くことした
「いいよ、えっと...ミコト?だっけ、ミコトは巫女さんなの?」
話を聞くと、巫女見習いらしく、稽古がきつくて逃げてきたらセツナにあってさっきのやり取りに戻る
「セツナ様も稽古が嫌で逃げてきたんですか?」
「呼び捨てでいいし敬語もいらないよ、私もミコトって呼ぶし...実はさ」
かくかくしかじかと説明していった
「殴ったんですか!?その男を?」
「...やっぱマズイかな?」
「多分大丈夫かな、そこはクオン様がどうにかしてくれると思うよ?」
だといいんだけどなあなんてセツナは思いながら再び買った団子を食べる
「だってあのクオン様だよ?」
「...ねえ、母上ってそんなに凄いの?聞いても何も言ってくれないんだよね」
セツナはミコトに驚かれながらずいっと近寄られた
「ええっ!?クオン様の伝説知らないの!?」
「で、伝説?」
先程とはうって変わってテンションが上がったミコトの肩を掴んで離れさせたがミコトの興奮は覚めていなかった、そしてミコトはクオンについて話してくれた
「クオン様はね、他国の人達に天下無敵の大将軍って呼ばれてるんだよ!」
「天下無敵の大将軍?」
「うん!2年前、全ての国で魔物がスタンピードを起こした時があったんだ、でもクオン様自身の強さや指揮のおかげでここの国の人は死者0人で終わる事が出来たの」
セツナにとってのクオンのイメージは身の支度は自分で出来ない、お酒大好きだ、好き嫌い激しい、このイメージしかなかった
「天下無敵...かあ」
「そう!クオン様は決して弱さを見せず、凛々しくかっこいいんだよね!」
「...そっかぁ!」
セツナは言葉を飲み込んだ、イメージを壊さないために
「それでね他にも沢山あるんだよ!」
「次はね」なんて次のエピソードを話そうとしていると後ろから「ミコト!」と呼ぶ声がした
「こんな所でサボってたのね...ダメじゃない!」
「姉上...セツナ助けて!」
ミコトはセツナの背中に隠れるが姉上と呼ばれた女性にひょいっとつままれジタバタするが振り解く気配はない
「すみません、セツナ様お手を煩わせて...では」
「あ、待って!ミコト、またここで会おう?」
「いいの?」
「だって、ミコトの事...その...友達...だと思ってる...から」
顔を赤くしながらセツナは伝えるとミコトが目の前にいた
「うん!またね、セツちゃん!」
そう言うとミコトはセツナの頬にちゅっと口付けをし、ミコトは茹蛸のようになりながらも帰っていった
「セツちゃんかあ、なんか友達っぽい...なんで最後ほっぺにちゅーしたんだろう?」
頭に?が残るもセツナは城に戻る事にした、だがセツナは友達が出来た嬉しさで忘れていた、なぜ自分が城下町にいたのか
「おかえり、セツナちゃん?」
鬼の様な形相のセツナが腕を組み仁王立ちでそこに立ち尽くしていたが
「母上、私に初めて友達が出来た!」
そんなことは知らずに満面の笑みでピースしながら言った
「...それはよかったねぇ〜」
クオンは鬼の様な形相は消えて笑顔でセツナを抱きしめた
「もう!セツナちゃんったら、怒ろうとしたのにこれじゃあ怒れないじゃない、まあ元より怒るつもりなんてなかったんですけど...」
「将軍様、甘やかさないでください!」
「嫌です!この子は死ぬまで甘やかします!」
セツナはすっかり殴った事など忘れていたため、クオンたちが何で言い争っているのか、わからなかった
「友達...ミコトとまたお団子食べたいなあ」
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