第2話 別れ

 ミリアは屋敷に帰ってくると父と兄と姉達が帰ってきているのを確認し、バレないようにこっそりと屋敷に入るが長男の兄カイケルにバレてしまい、次男のハイドに取り押さえられ、長女のアルエに見下ろされ嘲笑われていると階段から父・ジェルド・アムラントが降りてくる


「お父様、またこいつ外に出てやがったよ」

「...離してやれ、そんな役立たずに構ってる暇はない」

「はーっい!」


ハイドが離してどついて転んだミリアの手を踏みつけて大食堂の入っていくのを確認するとミリアは立ち上がり自分の部屋に戻って行く途中、メイドのジルと出会った


「ミリア様、大丈夫ですか...手当します」

「...ありがと」


自分の部屋に戻りジルに手当てしてもらうとミリアの母・ヨシュアが勢いよく入ってくるや否やミリムを抱きしめた


「ミリアちゃん、おかえりなさい」

「...ただいま、あと苦しいから離れてほしい」

「今日は、リン様の所に行ってたんでしょ、楽しかったかしら?」

「...うん」


ヨシュアはミリアの踏まれた手を撫でながらミリアの今日会った出来事を聞いているとジルが夕食を持ってきてくれた


「さ、食べましょう、それとも母様にアーンしてもらう?」

「1人で食べれるよ!私もう7歳だからね!?」

「その割には毎晩一緒に寝てるわよね」

「お母様が寂しかなっと思って一緒に寝てるだけですけど!断じて私が寂しわけじゃないから!」


兄にも姉にも父にも誰にも見られないミリアにとって自分の母といる時間こそが幸せだった

そして湯浴みをすませ、2人で寝ようとすると突如扉が開かれ、開けると焦った表情のジルがそこにはいた


「ヨシュア様!ミリア様!無事ですか!?」

「ジルどうしたのよ、そんなに焦って!」

「説明してる暇はありません!早く逃げましょう!こっちです!!」


ヨシュアとミリアはジルの案内されるがまま屋敷の外に逃げている途中ミリアは振り向くと屋敷が火の海になっていた


「なに...これ、どうなってるの!」

「...わかりません、気づいた時にはもう...」

「兄上達と姉上達は!?」

「お食事の後、王都に行くと出かけたきりです、あのお屋敷にはメイドや執事はもう...」


3人が燃え盛る屋敷を見ていると炎の中から1人の男が現れた


「依頼された2人はっけ〜ん」

「危ない!」


ジルが2人を後ろに押し倒すとジルの右腕に刃物が突き刺さった


「...ジル!」

「私は大丈夫です...あの男の狙いはおそらくあなた方2人です、私がなんとか時間を稼ぎます、逃げて下さい!」


ヨシュアはミリアを抱えて逃げるが背中を向けた瞬間、ヨシュアの肩がナイフで貫かれ思わず転んでいしまう


「お母様!」

「うっ...ミリア、あなただけでも...逃げて!」


貫かれた肩を抑えながらもミリアを逃がそうとするがミリアは足が震えて動かない


「で、できないよ!逃げるならお母様も一緒に!」

「ミリア!!」


悲しく怒りのような声で叫ばれ思わず肩をビクッとするとヨシュアから抱きしめられる


「ミリア、あなただけでも生きてほしいの...お願いだから逃げて...」

「で...でも、私1人でにげるなんて...」

「逃げなさい!!」


ミリアは涙を流しながら走った、暗闇の森のため足場もおぼつかないが走っていると、何かに足元を取られ、スピードを出していたいたため勢いよく転んでしまう


「やっぱり逃げてた、お父様こいつどうします?」

「あいつめ、1人も逃すなと言っていたはずなんだがな」


ミリアは聞き覚えのある声に痛みを我慢しながらも、顔を上げるのとそこには王都に行ったと言われていたジェルドとその兄妹が見下すようにそこに立っていた


「どういう事...王都に行ったんじゃ...」

「フッ、腐っても家族のお前らの死体を拝んでやろうとしたんだがな」

「ならさ、俺が殺してもいいかな、ほら俺いつしか、戦争とか出る事になるじゃん?だからさ、早いうちに人を殺す事を経験しておきたいんだよね」


何を...言っているの、とミリアは恐怖を感じたのと同時に逃げなきゃいけないと後ろにじりじりと下がりタイミングを測り駆け出すと脇腹に激痛が走り、思わず傷口を抑えながらうずくまる


「うっ...いた...」

「簡単に死ぬなよ?」

「うわっ悪趣味ねえ、お兄様ったら」


どうやらカイケルは簡単に殺すつもりはなく、いたぶってから殺そうとしている、ミリアは痛がる体の中、なんとか逃げようと匍匐前進のような動きで誰もいない方向へ逃げようとしたが右腕に剣が突き刺さりミリアはのたうち回る


「最後だから言っとくけどさあ、お前の事ずっと嫌いだったんだよね...あ、知ってるか」

「ずっと僕等を見下すような目でみやがって!」


ミリアに更に追い討ちをかけるかのようにハイドは顔面を踏みつけた


「愛人の子の癖にいっつもヘラヘラして、挙げ句の果てにお姫様とも仲がいい、調子乗ってんじゃないわよ...このクズ!!」


切り傷の脇腹をヒールで踏まれミリアは声にならない悲鳴をあげ続けたが何度も何度も痛めつけられた、しばらくするとカイケル達は飽きミリアの髪を掴むと崖の方まで引きずっていった


「お前は魚の餌にでもなってもらおうかな」

「あんたの墓なんか作るだけ無駄だからさ、わかるわよね?」

「安心しろよ...リン様は俺が慰めてやっからさあの世で見守っててくれや...な?」


リンの名前を出されるとミリアはカイケルの胸ぐらを掴みかかろうしたが避けられてしまったがなんとか足首をつかむ事は出来た


「...リンちゃんに...てを...だすな.,.」

「ああっ鬱陶しい!!離せ!離せよ!!」


ミリアは蹴られ続け手を離すとそのまま勢いよく崖下の方へと落下した、そして崖下の岩に頭をうちつけ海に流された

海に流される中ミリアはリンにひたすらあやまり続けていた


(リンちゃん...約束守れなくて...ごめん...ね)


翌日、新聞ではアムラント家襲撃事件と題されメイド執事を含め死亡者は21名と報道された

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